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目次

1)飯場土方作業員をやってみよう

この時45歳だった:何もかもに嫌気がさした・半うつ病状態だったかも知れない・ゼロからやり直して見よう・

住み込み日雇い:土方作業員

ここなら心身ともに自分を変えられる・そんな気がした・この仕事を一度はやってみたいという好奇心もある・原点に戻れるような気がした・人類起源の男仕事でだ・・

育った街・博多に行こう、永らく遠ざかっていた一番大切な母親を少しでも傍で面倒を見て上げられたら、との思いもあった、知り合いとか誰かに会いたいとかの気持ちにはなれなかった。

そこは博多駅から歩いて15分ほどだった、五階建ての壁に<募集の張り紙>が貼ってある・・入口のドアーを軽くノックして開くと親方らしき人がソファーに座っている・・

募集の張り紙を見て来ました・仕事をやりたいんですが

答えは二つ返事だった、待遇は日給9千円・部屋代と朝食で月5万円が差し引かれるようだ、すぐに3階の部屋に案内された、ドアーを開けると入口は縦横60cmほどの空間があり部屋は畳三畳のスペースと縦横60cmの押し入れ、エアコンなし・風呂なし・共同トイレと洗面所がある・・銭湯通いになるようだ~

2・3・4階に各8部屋がありほぼ満室だった、5階は親方夫婦の住まいになっている、他に通いの人夫もいるとか、布団は自前と言うのでさっそく布団を買いに行って寝床の用意を済ませることにした・これで明日から仕事だな~難しいことは考えないことにしよう。

ここにはどんな人達が働いているんだろうか

この世界は一般社会とは違ってるのだろうか・恐いのかな~というイメージはあった・まあいいか~やるきゃない・・手持ちの仕事着はどれもジーンズ¥18000円・シャツ類は¥12000円・こんなんしか持ってなかった・

♪ 朝だ~5時半に起床し質素な朝食を済ませる・・今日から土方仕事のはじまりだな~7時過ぎに一台の軽トラックが来た、OO電機と書いてある、

下請けの電気工事屋さんだった、車に乗せてもらい現場に到着する・空を見上げると雲一つないブルースカイだ~梅雨明け10日は好天気と言うがまさにその通りの陽よりだ・・

社長さんにハンマーとたがねを渡された:ハツリをやるからこのコンクリート壁を掘ってくれ(長さと深さを指示された)左手にたがね・右手にハンマーを持ち、狙いを定めて打つ・打つ・打つコンクリートを砕くと埃が舞う、どうしても吸いこんでしまう・ゴホゴホと咳込む・

今まで楽なことばかりをやって来たんだな~と思いつつ壁にむかってと打ち続ける・ガン・ガン・ガンと音が鳴り響く・回数なんて数えるなんてことはない、ただがむしゃらに打ち続ける・・

ハンマーを持つ右手が重く感じてきた・重い・右手が上がらなくなってくる、たがねの的を外して左手を何度か打ってしまう、痛い~それでも壁にむかって打つ・打つひたすらに打つ・汗をかきながら上を仰ぐと空はカンカン照りだ~

額から右腕から汗が吹き出すようにでてきた

やがて背中・胸・全身に汗が拡がる・昼時になりシャツを脱いで絞ると水滴になって落ち流れた・

現場近くで弁当を買って食べようとしたが、手がしびれて箸が持てない、箸を握ってガツガツと食べようとしたが、喉もカラカラに渇いて食べ物が通らない、時間をかけてゆっくりと押し込んで行こう・・

午後からは地べたのハツリだった、これを終えてパイプを取り付ける<その中に電線を通す>これでOK!なんとか一日は終わった・慣れない仕事で全身がクタクタだ~・銭湯に行こう・湯舟につかると心身ともにほぐれてきた・

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寮の中は物静かだった

なんとなく~当初の思惑とは違っていた~と感じた・いかつい顔の人がいないのだ・皆さん目が優しい・部屋に戻り一人になると<なにか変だな~>誰かが歩いてる時の足音は聞こえるがシーンとしてる・静かすぎる・話し声が聞こえない、、とても20数人の男達が同じ建物の中に住んでるとは思えない、どの部屋からも会話らしき声が聞こえない・

朝と夕方にみんなと顔を合わせる

2~3日が経ち通路で会った先輩にそれとなく聞いてみよう、あの人の名前はなんて言うんですか?・尋ねて答えられるのは1~2人だった<名前を知らないようだ>なるほど・そうなんだ・仲が悪いとかは感じられない・きっかけがないのか・遠慮をしてるのか・・

それではと・策を講じることにしよう・

<やってみよう>翌日から顔を見合わせた先輩達にその都度:あの人の名前は何と言うんですか・と尋ねることにした、2週間でほぼ全員の名前は解った、それでは始めよう・

ことあるごとにわざとらしく大きな声で呼んだ

OOさん~OO々さんと~名前を連呼して大した意味もない挨拶をするようにした、日々やってると効果てき面だった~同じ屋根の下だ・2週間も過ぎると皆さんが互いの名前を憶えてくれたようだ・やがてこれが会話へと繋がっていった・それまでは顔を合わせても名前も知らずきっかけを掴めなかったようだ・

<本当は話をしたかったんだ~>

皆さん各部屋へ行き来するようになって<通路にも笑い声が聞こえた><うまくいった>

日曜日の休日に佐藤先輩が話しかけてきた、あのな~31号室の田中さんはお金を貯めて2年後になにかを始めると言ってたぞ~・と、言ってくれた・

やった~~・そういう話が聞けるようになったんだ~<嬉しかった~>そんなこんなで仕事も身体も少しづつ慣れてきた。

ある現場の昼休みだった・汗を流し熱くなってる身体をコンクリートの上に寝そべると、ひんやりとしてなんとも気持ちが良いのだ、、横にいた先輩に <結構つかれますよね> と言ったら《先輩は一言つぶやいた》

《 あ~ この世に楽な仕事はひとつもない 》

三ヶ月が過ぎて後輩が入って来た

彼は見るからに遊び好きで:のんべんたらりとした雰囲気だ~〈私は楽な道ばかりを選んで生きてきました〉と顔に書いてある、一緒に現場に行っても・あっちに行ったりこっちに来たりと・ただウロウロするだけで何もやっていない、なのに二言目にはキツイ疲れたと言いながらくっついてきては傍を離れない・・

そんな彼に笑いながら言った<ああ~そうかい>この仕事はアスレチックやってお金がもらえるんだもんな・一石二鳥だ、ありがたや、ありがたや~

<楽しいと思うか・苦しいと思うかは、考え方一つで決められることなんだ~>とは言ったものの、ありゃりゃ~今からは彼には疲れた表情を見せられなくなったぞ~

<だが彼は・ひと月を過ぎた頃には姿を見せなくなった・やっぱしな~遊び人にこの仕事は無理なようだ>

おいらは運転手を兼用でやることにした<運転手当が貰える>どういうわけか皆さんは車の免許を持っていなかった(ひょっとするとそれぞれの都合で隠してるのかな?)それからは自社のマイクロバスで建築現場へと運転するようになる。

現場初日の:仕事を終えて

佐賀・武雄温泉のマンション建築の帰りに町の中に入ると・いきなり・次の信号のところで止めてくれと声が聞こえたので道路の隅に車を止めるとせきを切ったように皆さん飛び出してゆく座席を見ると一人も残らず・何事かと思えば・そこは酒屋さんの前だった、

思い思いの酒とつまみを買っては車中で飲むのだ、最初は驚いたが毎日そうだった<ふ~ん~なるほどね>

<それから数日後に答えは返って来た・歩いての現場帰りに皆と酒屋に入った・好きなビールを一口に入れた>

ウワ~なんだこりゃカラカラになった喉からビールがシュワ―ッと音を立てるように<一気に浸透して身体中に拡がってゆく>日中に汗を流し水分不足になってるので吸収がまるで速い、ビールの炭酸とアルコールとが体中を駆け巡ってゆくようだ・それまでに経験のない感覚と美味さだ!これは快感だ~

長年飲んではきたがこれほど美味く感じるとは・クーラーの効いた勤め帰りの一杯とは別物だ~

ある日の事だった

遠出の現場から帰路の途中にガソリン切れを起こしてしまった<ミスった・・>乗用車とはゲージの感度が違ってた。

ゴメン、ガソリンが切れた・と、ひと言った途端に宮崎さんが後部座席のポリタンクを持つや、ドアーを開けて脱兎のごとく走って行った<まさに瞬時の出来事だった>15分ほどして息を切らせながら佐藤さんはガソリンを持って戻って来た。

<宮崎さん、ありがとう、ありがとうございます>帰ってからすぐに宮崎さんの部屋にお礼にいった、その時に宮崎さんは言ってくれた、

♪ この人のためなら何でもしてやろうと・そう思ったんだ・・ん~<感激して言葉が出なかった

そんな宮崎さんに聞いてみた<どうしてこの仕事に入ったの?>宮崎さん曰く・田舎の友人に40万程を借金して返せなくなったと・<おいらは答えた>良かったら一緒に行って謝ってあげるから<その時は声をかけて下さい>

土方仕事はハードだ!

企業や会社とかで社員が手に負えないようなハード作業とかがあると:ヘルプとして依頼が入る、山ほどのゴミ処理・重量級の運びモノ(きつい・きたない・危険)の3K仕事の時に応援に行くことになる。

土方人夫はそれを承知で働くので愚痴ひとつこぼす人はいなかった<自ら選んでこの仕事に挑み励んでる>

そんな人達に恐いというイメージを持ったのは間違いだった・ただひたむきで実直に仕事をこなしてゆく・・過去は知らない・・でもみんな目が優しい・・

♪ 4ヶ月が過ぎて近くにマンションの一室を借り・手作り弁当を持って通勤するようにした。

・・やがて仕事も身体も慣れて新年が過ぎた:春の日差しの頃に<卒業の日は来た>子供の頃に少しは力仕事をやったせいか、椅子に座る仕事よりもこっちにの方が好きだな~とも思った!

(土方殺すには刃物は要らぬ、雨の三日も降ればよい)この言葉は本当だった。 

 ♪  有意義な日々を過ごせた・リフレッシュも出来た・面白かった!

2)ホスト・ナンバーワンは誰がなるんだろう

 54才だった

高松市でホストクラブを始めることになった、当初は子供向けのアニマルレストランを開業しようとロスアンジェルスへも視察に行ったのだが・予定の場所を貸してくれなかった、理由は県外の人だからとのこと・それじゃ仕方がないとホストクラブでもしようかと切り替えることにした。

人口は40万人ほどの中核市で夜は賑わっていた・まずは街を散策してみることしよう、中央商店街のアーケードは総延長は2.7㎞と日本最長らしい。

都会の商店街とは違い広くて綺麗だ・・ごちゃごちゃとした雰囲気もなく、のんびりと散策できて気分が良い・イイ通りだな~商店街から横道に入れば飲み屋街だった・スナックビルの看板が多く・周囲の雰囲気からしてこの土地の人は夜遊び好きなのかな~

寿司屋さんがあっちにもこっちにある、寿司屋さんが多いところはお水が賑わってると言う事になる・まずはは不動産屋に行って物件を見せてもらうことにしよう・・

三軒ほど見せてもらって6階建てのスナックビルの3階に24坪の物件があった、以前はクラブをやっていたとか・・ここに決めよう、

居抜きの物件で店内は散乱とした状態のままなので地元の工務店に改装を依頼をすることに・・え~と改装が終えるまでにすることは求人誌にホストの募集広告とカラオケ屋・酒屋・食器具・備品・装飾用品とか・足を運ばなきゃ~

一応の準備や内装も終えてやっとクラブらしくなっている、各ボックス席は透き通った薄い色柄の開きカーテンで仕切られている、色違いにしてあるので、個別席の雰囲気感もでている・・

面接の日がやってきた、初経験や元ホストとか12名を決めた、20~26歳で身長164㎝~183cm・可愛い・しっかりした顔つき・のほほ~んとした男子とかそれぞれに持ち味がある・・

その中にひときわ目立つ美男子がいた、背も高くスマートだ、これはなかなかいないぞ~まるでヨーロッパの貴公子のような雰囲気を醸し出す男子だ・他のホストも見るなりに男前だ~と・声が漏れる・太目の男子は一名しかいなかった、少ないな~

従業員寮有りで募集したので、遠方や部屋を持たない者に住めるようにマンションの一室を借りておいた。

出勤時間は19時~21時~閉店が5時までと長いので、食事はいつでも食べれるように賄い食を作れるようにしている・給料も食べて行ける分だけは固定給として渡すことにした・・と言う訳で開店の準備は整った・・

開店前日にホストに集合してもらい食事会開いた、人は食べると緊張も緩み表情も穏やかになってくる・難しい話はしない、この縁を大切にし仲良くやってくれれば・転ぶ者もいれば助ける者もいる・それが一つの輪になれば・・

短い挨拶言葉を終えて・お酒が入れば自然と笑顔がこぼれる・互いに自己紹介を始めだした、にこやかで気持ちがいい・・仕事はその都度に指導をすることにしよう・・

マスターの仕事は:客席マナー・心遣い・身だしなみ・悪酔いをしない酒の飲み方・一人一人に成長を促す言葉・・教えることは多々ある・・そして何よりもお客さんと従業員の安全を守る事が第一になる。

お客さんの中にはマスターと言う名が好きな女性もいる、だがここはホストが主役の場であり、彼らの仕事を奪うことなく、さりげなくホストに振り分けることにする。

・・はてさてこの中で誰がナンバーワンホストに成るんだろうか・・

貴公子のジュリー君はナンバーワンにはなれないだろうな~・とだけは解る、あれだけの美貌ならほっといてもお客さんはつく、あまり頭を下げることはしないだろう・・

昼間に仕事を持ってる蒼君はしっかりとした口調で話す切れ者に見える・面接の時にあれこれと質問を投じた長身の晴樹君はリーダーシップを発揮しそうだ・アルバイト学生の宗介・それとも結城君・ジョージ君・慎介君か・誰だろう・   

 予想はしてみたが<誰なんだろう>

3)予想は外れた!

 新規オープンの準備は整った、が、お客さんはホストだけに頼るわけにはいかない、店の宣伝用チラシと名刺を事前に作って用意してあったのでホストにチラシを配布してもらうことにする、

お客さんが持参してくれればボトル一本をサービス:どこにでもある内容のチラシで下欄にホストの名前を書き入れて配布をして貰った。

お客さんがチラシを持参すれば:書き入れた名前が担当になる、又売り上げを上げたいホストには風俗に遊びに行かせた。

風俗嬢とホストは似た者同士で縁深い:風俗店に行かせて女性とは会話や入浴だけで帰らせる、それ以上の行為はしないのがルールになる、行為があればその場でただのお客さんになってしまう・あくまでも本人の宣伝目的であると言うことを言い聞かせた。

 クラブやラウンジにも名刺を配布するようにと飲みに行かせる・・その他は街中でチラシの配布したりと・・

 そんなこんなで店はオープンした・・さてと誰がナンバーワンになるんだろうか、楽しみだ~一月もすると決まった!身長164㎝25歳の涼君だった、歌も上手かったが何しろマメによく動く・細かいところまで気が利く、いつも機嫌が良く・仲間内ともよくしゃべる・・

お客さんが帰る時にはエレベーターまで見送り・ありがとうございました・と扉が閉まった途端に脱兎のごとく階段を駆け下りる・一階で扉が開いた瞬間・目の前には彼がニコリとして待ち受けている、またのご来店をお待ちしております・と丁寧な挨拶を怠らない <これは定番だがお客さんは喜ぶ>

 彼は色々と自分なりの作戦を用意していたようだ・・お客さんの耳元にそれとなくつぶやくのだ・・僕、昼間は何もすることがないんです、何でもやりますからお手伝いさせてください・TEL・待ってますよ~奥様方はこの文句に引っ掛かる・・昼間は有閑マダムである、なにかと・都合がよい・・

 彼は歌もうまっかた・・歌がうまいと女性にもてる‥これは確かだ・・

こんな会話を耳にしたことがある:飲みに行った席でお客さん同士が『ここのママは歌の上手な客と』一緒になったらしい:歌が上手なだけで一緒になるなんておかしいだろう・と・『解ってないんだな~この人達は』と思いつつ口は出さないが。

  歌の選曲で考え方が見えてくる・歌い方や仕草で性格・感性・感情が読み取れる・女性は第六感なるものを持ち合わせているんだよね・・

<男性は視覚から・女性は聴覚から異性を感じとる>

ホストの給料は

歩合が習わしになっている、その多くは5:5とか4:6とかで配分される、高いモノを売るほど収入は増える、だが普通客も大切なのでボトルキープは一本5000円~その他もメニューで選べるように明朗会計にしてある。

ヘネシーやナポレオンとか高価なモノもあるが・それ以上に上限のないボトルが一本あった・ヘネシーリシャールだ、当時の仕入れ値で24万円也・・

このボトルの売値を決めるのもホストになる、40万~80万円かはお客さんに応じて売る・・ホストは店の看板を借りて商いをするビジネスであり・歩合の妙味でもある・これは口座を持ったクラブホステスもと類似している・・

 月末に売り上げ競争をする時がある、どうしても今月はナンバーワンに成りたいと思ったときに戦いがある、ひいきのお客さんを呼んで売り上げ合戦を始めるのだ、常連客も何とか私のOOOを一番にしてあげなくちゃ・と・酒の勢いに乗って我を忘れるまで飲ませたり飲んだり・・捨てたりもする。

  酔いが醒めた翌日にはビックリ仰天とかになったりで<ひと晩で一年分を使うかもしれない>我を忘れて一瞬の人生に酔いしれる・これも女性の魅力の一つなのかも・

地方のクラブは東京や大阪のクラブとでは落とす金額に大きな差がある・・都会にはお金に糸目をつけない奥様方が多々いるようで・・桁がまるで違う!

  ちなみに男はその日の飲み代やひと月の飲食代をそれなりに計算しながらチビチビと飲んだりするのだが・・・

 ホストクラブには必ずや風俗の女性が来店する、この女性たちの存在があってこそやってゆけると言ってもいいくらいだ、ではなぜ風俗の女性は高い料金を支払ってでもホスト遊びをするのか・・

彼女達は好き好んでその世界に飛び込んだと言うわけではなく、多くはそれなりの事情を抱え思い悩んだ選択の末に・とかもある・お客さんの中には無理難題を欲求する人もいる訳で・そんな時にも笑顔を返して頑張らなきゃ・と仕事に励む・・

そんなお客さんに限って店や女性にクレームを押し付けたりするんだが・・

入店してからも精神的な愛が遠ざかるのでは・何処かへ消えてゆくのではと自負心に悩む女性もいる・そんな仕事を終えたあとの解放と発散がホストクラブなる、ホストなら似た者同士だから好きなことも言えるし・悩みも語れる。

彼女達はホストに無理難題を押し付けてそれが気晴らしになる、お酒が弱いホストにはガブ飲みをさせて酔っぱらった姿を見て笑い転げて面白がったり・お酒が強いホストにはどこまでゆくんだよ~を楽しんだりもする・さあ~今夜も宴会だよ~

ここには2年ほどと決めていた・本業との往復で淡路鳴門大橋は100回以上も往復したようだ

《少しはこの土地の若者の気質を知ることが出来たようだ・我が息子はこの地で育つことになる》

愛媛・高知・徳島へも何度か遊びにも行けた・四国は山の綺麗な所だった

   良いことも・悪いこともあったが・両方合わせて<イコール・ゼロ>になる・気にしない・気にしない・あ~楽しかった

4)恋のキューピットになった

24歳の時だった

大阪は難波の宗右衛門町通りに面した、6階建てビルの3階に100坪のマンモス洋酒喫茶(バーのデッカイやつ)があった、ロングカウンター45席と丸カウンター等で160席ほどある、男性バーテンダーが24名、ウエイター8名の大きな店でこの店は流行っていた。

どういう訳かおいらは先輩を差し置いてふた月で総チーフに抜擢された(東京・札幌の実績が功を博したのだろうか)

  いつも客席は満席で土曜日には3回転以上~する繫盛店だ、各カウンターでの売り上げ競争があり順位に応じて報酬が貰えるシステムにもなっている・大入り手当も貰えた・

お客さんは女性の方がやや多く・看護婦・銀行員・OL・学校の先生・飲食関係等々、年齢層は20代女性が60%それ以上が40%ほど、男性客は女性が多いので、それをお目当てに来店する、20代~50代とほぼ平均している、

その日は火曜日だった、パリッとしたスーツを着こなした30歳位の男前さんが一人で来店する、いかにも仕事はできそうという感じの彼が一杯飲み終えたころに話かけてきた、、今週の金曜日に彼女を連れてくるから頼みたいことがあると言う・いいですよ何ですかと聞けば・彼女に強いカクテルを飲ませてくれ・だった・・

  ええ~了解しましたと即答をした、金曜日になると二人はやって来た、彼女はしっかりとした顔立ちの結構な美人だ・・彼氏は下心もあってか少しばかり緊張気味の様子・・

  飲み物は美味しいカクテルでも作りましょうか・と、シェーカーを手にして二人に美味しいカクテルを差し出すこと<当初から決めていた>彼女にはリキュール(果実酒)主体の色がキレイでアルコール度数の低いドリンクを

彼氏には色合いの薄いウオッカ・テキーラ・ジンベースを主体、ついでに当時一番アルコール度数の高いアブサンも入れよう!てなわけで、シロップを混ぜて甘みをつける・これでOK・は~いできました~どうぞ・と差し出す・・

少しばかり席を離れて飲み終える頃を見計らって2杯目を出す、会話の邪魔をしたくないのでたまに行っては・飲んでますか~と・言っては席を離れる、彼氏の勧めもあって三杯目・そして四杯目・これで決まりだな~かれこれ90分は経過している

席に行くと会話もおぼつかない彼氏と至って平然とした彼女がいる・・もう帰るからと彼氏が言うので伝票を手渡し、ありがとうございました・後姿を見ればふらついている彼氏を彼女が支えつつ帰って行った、少し効きすぎたかな~

  あーあ~これでいいんだ・・彼女にその気があれば介抱するだろうし、それで上手くゆけばめでたしめでたし、そうでなければ彼氏の下心が裏目に出たと言う事になる・・縁は大切にしなくちゃ・・

店は今夜も忙しい:男女がそれぞれに思惑を秘めながら・客席へと着くのだが、いつもながら一人客が結構多いのだ、、おいらも皆と会話を交わしたいが手が廻らない、

<よ~し~こうしよう!あの人とあの人は年恰好も雰囲気も合いそうだ~・まずは女性に一言・声を掛けよう>

  ”あのね~向こうに男の人がいるでしょう<そう一人でいるあの人・彼と一緒に飲んでくれない>良さそうな人だよ、おごるように話しをするから、と・それとなくOKをもらう・

次は男性に声をかける ”あっちの女の人一人で来てるんだけど一緒に飲んでくれない” 一杯おごって上げてよ、話しはしといたから、ね~、

ほぼ全員OKだった、そりゃそうだよね~相性を見計らったんだから・これで一石三鳥・ドリンクのお代わりで売り上げは伸びる・手間は省ける・二人が上手くゆけばなお良しと・・

  多忙な時とか、どこか遠くを見つめてるお客さんにはこの手を使う、一晩に三組をくっつけたこともあった・・おいらのカウンターの月間売り上げはいつも一番だった!

♡ それだけではなかった付録がついてきた ♡

次に二人が一緒に来店した時に・彼氏が口を開いた僕たち結婚するんです>え~おめでとう・やった~やったぞ~嬉しかった!それは一組だけではなかった他にもいた・いた・多分報告に来なかったカップルもいるはずだし・よかった・よかった  

♡♡ 恋のキュピットになれた ♡♡嬉しいな~

5)バーテンダーになる

おいらがバーテンダーの道を選んだのは19才の時だった:専門学校を卒業して『当時・大阪生野区にフナイ電気はあった』入社すると海外ブランド名(OEM)でトランジスターラジオを製造していた、ベルトコンベアーの流れ作業で動作検査を任されていた、仕事は嫌いではなく仲間もいて楽しかったが、一年半を過ぎて会社の天井を仰ぎ見た・

ひょっとすると一生この箱の中で暮らすのだろうかと・疑問を感じてきた・人と交える仕事がやりたい

と言うのは少年時代に義父に育てられ<いつも怒鳴られてばかり>ただの一度として教えを説くような話をして貰ったことが無く<父親世代の大人の話を聞いてみたい>どうやらこのことに飢えていた・・それが根底にあったようだ。

バーテンダーをやってみよう、そうすれば大人の話が聞けるはずだ

大阪駅前の阪急東通商店街は飲食店がひしめき合ってる場所だった、人通りが途切れることなくいつも賑わいを見せている、ここなら働く場所もあるはずだと、募集の張り紙を探し歩くと・あった見習いバーテンダー募集!結構大きな店舗だな~と思いつつ、足を踏み入れた・・

面接に来ました!

初老のチーフマネージャーの説明は:全寮制で食事は2回付く・入店三ヶ月はウエイターを経験する・この期間に勉強をして初期試験が受かればカウンターに入れる・カウンター試験に受かればシェーカーを振ることが出来る・とのこと、

洋酒喫茶こだま:チーフマネージャーはバーテンダー協会員だった:この店は実践教育をやってくれる、これはツイてる・即応で入店を決めた、翌日に着のみ着のままで寮に入る、8~12畳の部屋に2~4人で風呂はないので銭湯通いだった、廊下に洗面台がありその近くになぜか100kgのバーベルセットが置いてあった。

初出勤だ~、店内は丸いカウンターが三つとロングカウンターが二つで全席で100席ほどある、バーテンダー16名・ウエイター4名ほどがいた。

ウエイターの三ヶ月間に勉強ができる<カクテル本とにらめっこの日々だった>店にゆけば連日盛況~大好きなプレスリーの<It’S Now or Neber>がジュークボックスから鳴り響く胸が躍りワクワクとしてきた・・

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色々と憶えることがあった、カウンターマナーでは両手は腰から下と肩から上にはダメ、顔や髪を触るはご法度、カウンターには肘をつけない・両手をつけない・酒の名前・原料・製造工程・アルコール度数・エキス分・産地・グラスの名前etc,

技術面では空のボトル瓶に水を入れ<ひとひねり15ccをグラスに注ぐ、ふたひねりで30cc>指先で酒の分量を知ってこそカクテルは作れる、カクテルグラスは60ccなのでシェーカーに配分量を注ぎ入れ・中の氷が8の字になる様にシェーカーを振る。

カクテルグラスに注いだ時に分量が少なすぎてはダメ、多過ぎてもダメ・ピッタリにならなければ技術不足になる、カクテルは30種類以上は記憶する・グラスの洗い方は口元を洗う・ボトルやグラスは毎日セルメットで乾拭きをする、椅子もカウンターも丁寧に拭いておく、いつお客様が来ても対応できるようにと教え込まれた・・

おまけにアサヒビールとサントリーへの工場見学まであった・・完璧だ~

 やがて三月が経過しカウンター試験も無事終了、半人前のバーテンダーになったが、どうしても覚えなければいけないことがある、洋酒の味だ・・味を知らなければお客さんに自信をもって出せないのだ・方法は一つしかない・

盗み飲み!これしか方法はないのでは<やることにした>毎日少しづつ・そしてぜ~んぶ飲んで味を知り《ミックスすればどんな味になるのか試飲もした》これでカクテルが出せるぞ~・

確かに盗み飲みをしたが・後に考えてみると・どうもこれは暗黙の了解だったようだ<イイ店だ~>

当時高級ウイスキーはジョニー黒だった<飲み比べるとオールドパーの方が美味しかった>20年後にはオールドパーの方が価格は高くなっていた、やっぱし~味は正しい~

一度こんなことがあった:ウエイター二ヶ月目にカップルのお客さんを案内してる途中だった、すれ違った後輩ウエイターが、急にこちらの席にどうぞと言って別カウンターに座らせた・入口に戻った時に注意を促した・カップルだからBカウンターよりCカウンターの方が話がし易いはずだ、それと案内途中ならその人に任せることだと、

そう言った途端に

<こっちに来い>と地下の機械室へ・ついて行くといきなり殴りかかってきたので応戦すると・強い~と言って逃げたまま戻って来なかった<怒る程でもなく・辞める程でもないだろうに>社会に出ればこんな事の一つや二つはあるようだ。

チーフが言ってた君たちはスターだ<お客様とデートする時はこの地域内はダメ>地域外で逢いなさい、君たちが仕事をしている姿に魅力を感じるのだと・とは・言ってたがおいらにはピンとこなかった・が、やがてその日は来た・

なんだかんだと言いながら10ヶ月過ぎた頃には一人前になっていた、若きは覚えるのが早い!確かによく勉強もした《沢山の人達と会話も出来た》寮に置いてあるバーベルもベンチプレスで95Kgまで上がるようになっていた。

♪ その頃:おいらにはいつも仲間がいた、同郷の同級生次郎ちゃん・五郎ちゃんとフナイ電気を辞めた時に英ちゃんと哲チャンも退職した・ある日に次郎ちゃんが話しを持ちかけてきた・

旅をしないか・・東京から北海道札幌まで各半年で一年間を・と・ 

これは今でしか出来ないことだ!よーし、行ってみようか・と、英ちゃんを誘って三人で行くことになった<汽車賃しかないが>行けば仕事はあるだろう、何とかなるだろう・

何しろ花の東京だもんな・・東京のバーテンダーの腕も見てみたいしな~・・出発だ~~

6)新宿に着いた・・

♪ 駅のホームからアナウンスが聞こえてきた、新宿~新宿~・着いたぞ~

さあ~降りようか、列車から駅構内を出て街を眺める<ワクワク気分だ>ここが歌の文句にある新宿なんだ。

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この街で新しい発見と出会いがあるんだろうな~、そんなことを言い合いながら三人で第一歩を踏み出した、早速働き場所を探さなきゃーおまんまが食えないぞ<歌舞伎町全域を歩き回り募集の張り紙を探しまくる>一件、二件。三件とあっが、新宿で一番大きな店で働きたい、、残念・そこは募集をやっていなかった、しょうがない、じゃここにしよう。

西武新宿駅前の五階建てビル、地下1・2階が店舗”NIKKA BAR” 西武”とあった、表の看板にはハイボール¥80と超安の洋酒喫茶だ<面接をしてもらおう>履歴書にはバーテンダー経験2年半にしておいた。

少しでも経験がある方が給料は高いだろうからの理由だったが、入店時はみんな定額給料になるそうだ・即決だった・次郎ちゃんも面接時間をずらしてウエイターとして入店した。

寮あり一食付き、店内は地下1階に楕円形カウンターとロングカウンターが5つ、地下二階は3つのカウンターと厨房があった、従業員はマネージャーを含めて19名ほど・英ちゃんも近くのBARに入店できた。

仕事をやりだして首都と地方の差を感じることになる、それは語学力と社会常識のレベルだった・日々新聞を読むことは最低限のことだと感じる、なるほど~知識が必要なんだ・勉強しなきゃ~・

ふた月を過ぎたころに楕円形カウンター7人席を一人で任された、ある日開店間もなく一人の女性が座ってくれた、するとその後もまた女性が一人・次は二人連れ・結局7席が女性客で埋まった、他のカウンターは一人もお客は座っていなかった、この時カクテルの注文がダブったので・両手で二つのシェーカーを同時に振って作った・・

すると先輩バーテンダーの目線が一斉にこっちに向いた、両手でシェーカーを振り二つのカクテルを同時に作るのを見たことがなかったのだろう、、そんなこともあってか入店時から給料は毎月上がった<これが東京なんだと感じた>

一か所に女性客が集中したのは、これは単なる女性心理にしかない、先輩はモテた思っただろうが違うんだな~誰かが座っていると安心感を感じる・何かあるのかな~と、好奇心に惹かれただけのこと・ただそんだけ~

職場で大阪と東京の違いを感じたのは上下関係だった、ここでは先輩面をするような人がいない、仲間意識が高く協調性と実力主義を大切にし紳士的で働きやすい。

芸能界も身近に感じた:新栄プロダクションの課長に名刺を渡され:ウチにおいでと(スカウトなんだ)又先輩から日活映画に知り合いがいるから何時でも紹介すると言う・新人なのに同等に扱ってくれる、ここには地方にはない優しさがある。

一つだけ困ったな~があった:発月給を貰って寮に帰ると誘いがあった、みんなでおいちょかぶ(賭博)をやるんだ<これは恒例だと言う>流れに逆らわぬ主義なので仕方なく次郎ちゃんと一緒に付き合うことにする、初めてだったが、ルールは簡単9に近い数字が勝つ、古今東西ギャンブルのルールは子供でも覚えられる。

こりゃー負けると大変だ~ひと月分の給料を失うことになる<何が何でも負ける訳にはいかないと・何度も肝に念じた>どうすれば良いのか・下に置かれた数値以外が<残り札の中にある>この数字を読み取ることと<感>だけが頼りか。

方針は決まった・これが夜明けまで続くのだ、一月分の給料を負ける者もいた、が、とりあえずは負けずにホッとした<少額を手にしたが嬉しくはない>その後も毎月あったが4ヶ月でやらなくなった・・

<理由はやる度においらの一人勝ちになった>他の誰もが勝てなくなっていた、貸し金は貰わなかった・ひと月頑張った給料だ・貰う訳にはいかない!<この時に・ひょっとすると博才があるのかな~と感じる>

首都に来たので腕のいいバーテンダーをみたいと思い新宿の一番大きな店に行ってみた、何人かの手ほどきを拝見したがこれと言って学べるモノはなかった《梅田の”洋酒喫茶こだま”が一番レベルが高かった》

雑誌とかではホテルのバーテンダーが一流だと記してあるので新宿にある有名ホテルに行ってみたが、これも参考外だった<日々こなす数が少な過ぎる:ホテルBARの来客数は限られているのだ・違いと云えば客層なんだろう>

そうこうしているうちに半年が近づいた・月日の過ぎるのは早いものだ<次は札幌だな~>良かった良かった、みんな優しかった・楽しかった!

7)札幌だ~すすきのだ~

上野駅~札幌間の急行列車はさすがに遠く感じた:青函連絡船で青森港から函館港へ、そこから札幌駅へ合計22時間以上は要した・昔は『北海道』と言えば遠い<地の果て>だと思ってた、そんなところへ行けるんだ<ワクワク夢気分で心は踊る>列車内では駅弁を食べて旅をする時代だった、駅弁は大盛況だった。

今と違って人々はのんびりとしてたのだろうか<キレると言う言葉もなく>旅は道連れ世は情けと・列車内の会話も多かった・この言葉はもはや死後になったようだ・

朝方に札幌に着く・駅前に路面電車が走っている、それに沿って歩けば繫華街へ行ける・街が碁盤の目のように区画されて解り易い、なん条なん町目と順番通りになっている、開拓地なんだと気付く、三人でキョロキョロと物見しながら歩くと目につくのがラーメン屋だ・入ってみようか・食べると太麺に具沢山でこりゃ~美味いわ~今迄で一番だ~

腹ごしらえはできたし仕事を探しにゆこうか<何でもいいからやろう>商店街を歩くが募集の張り紙がない<あったのはパチンコ店だけ>とりあえず面接を受けると住み込みで布団は自前で持ち込みだと言われ、二件目を探すがない、周辺を歩き廻って一日目は終った、二日目は各自で仕事を探すことにしようか・・

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<すすきの>に行くと大通りに面したビルの壁に一枚『バーテンダー募集:洋酒喫茶グランドスター』あった~エレベーターで最上階の7階に店舗と事務所がある・ドアーを開けて面接を受ける・願ったり叶ったりの寮付きだ~今日から働けると安堵する、次郎ちゃんは焼き肉店と英ちゃんはクラブのバーテンダーに決まった・これでスタートできる・さあ~頑張ろう~

17時前に店に入ると結構広い100席は有りそうだ、ロングカウンターは40席ほどあり奥にもカウンターが二つある、ロングカウンターの目前はステージになって楽器が置いてあった、カウンターの中に入り仕事だ~

1時間程で満席になった:バンドのメンバーがステージに上がる<演奏が始まったギュウーン~ドラドラ・バンバンとギターやドラムの音が壁に反響して鳴り響く、ボーカルが歌い始める・鳥肌が立った・驚いた~ワクワク・ドンドンだ・・

凄いぞ~こんな店・大阪にも新宿にもなかった・お客さんが踊り始める・我を忘れて目はくぎ付けになった~ボーカルが叫びながら『ふるさとは宗谷の果てに』を歌った・上手い・耳にこびりついた。

胸躍る日々が続き仕事も慣れたし、そんなある日に千歳基地から米軍の兵士達が団体で遊びに来た、ワイワイと賑やかに飲んで踊って楽しんでる、目の前の一人が声をかけてきた<腕相撲をやろう>・OK~(手の平を合わせてやる:アメリカ流だ)

右腕は難なくおいらの勝ち、左利きだからと次は左で<これも難なくおいらの勝ち>こんなやせぽっちに負けたので頭にきたのか、一番強い仲間を呼んでくるから~

意気揚々とやってきた25歳位178cm76kgくらいだった、左利きだからと手の平を組んで・Go~両者全く互角、右・左に少し傾くが数分経っても双方譲らず<引き分けた>今度は両手の指を絡ませて持ち上げるやつをやろうと云ってきた

OK~カウンターの外に出て<両手指を絡ませ・いちにのさん>持ち上げようと全力を込めるが上がらない、よ~しもう一度と力を込めるが上がらない、相手も同じく必死になってリキんでるが上がらない、周りには30人ほどが集まっていた中で・誰かが言った、引き分けだ~・これほどの互角は滅多にないとも思った

その頃のおいらは171Cm-53Kgだった<こんなにキャシャナ身体>で<ジャパニーズボーイは手強い>寮のバーベル上げをやってたのが効果したのかな~小学校の頃から力仕事を手伝ってた訳だし少しは力があったのかも。

ある日:閉店後にトイレに行くと掃除中のウエイター3名がざわついてる<うわー汚いどうしょう>何気なく振り向くと洗面台に<お客さんがゲロしたモノが溜まってる>なるほどそういうことか・・

ウエイターにビニール袋を持って来てと告げて・真っ白のカッターシャツの両袖を捲り上げ、素手でゲロしたものを何度もつかみ上げては、残さずビニール袋に入れた・そしてウエイターに言った・

『仕事はこういう風にやるもんなんだ』その姿を入店一週間の見習いバーテンダーの信ちゃんがジ~と見ていた

三ヶ月も経たない出勤時に事務所に呼ばれた<突然だった退職になった・首になった>この紙にサインをしてみてくれとマネージャーに言われ・サインを終えると一枚の会計伝票を取り出し・このサインと同じだな~と言うが、似てはいるが違う・・

おいらのサインは一か所に特徴付けをしている・その部分を指摘したが、マネージャーは決めつけていたようで聞き入れてはくれなかった<誰かがサインを真似て不正をやったようだ>同じカウンターには5名いる、消去法でいけば察しがついたが・・しょうがない・・

振り出しに戻った、仕事を探さなきゃー、住むところは後輩の信ちゃんがアパートを借りていたので、シェアすることになった、有難い・感謝!

小さなクラブにウエイターで入店した<ママとホステスが5人>チーフが一人・この店の一品は毎日同じだ~ジャガイモを4~6つにカット、面取りして揚げた手作りの素朴なポテトフライだったが、地元だけに流石に美味だった、未だにそれ以上のポテトフライは食ったことがない・日々の事だからチーフの目利きと創作が一因なんだろう、、

入店してふと月した頃に従業員の慰安で洞爺湖に連れて行ってもらったが<こんな小さなクラブで大丈夫かな~と心配した>お客さんもあまり入っていないようだけど、客単価が違うのかな~セット料金はいくらなんだろう、と余計なことを考えてしまった・優しいんだな~

日曜日は休日だ天気も良い、その頃の札幌は真夏でも気温は25度前後で清々しい春のようだった、信ちゃんと大通り公園に出かけた・目に留まったのは真っ白のスーツ姿の女の子だ<ひと際目立っている>が、時間を持て余しているようだ、

ヨシ!信ちゃんに自信を持たせてあげよう:あのな~信ちゃん・あの娘に➜こんにちわ~何処から来たの<・・・>疲れたでしょう➜俺んちすぐ近くなんだ➜休んでゆきなよと言えばイイから➜それでうまくいくよ➜と伝える<え~ほんとかい!>ああ大丈夫だから行っといで➜その後に二人で歩く姿を見届けて・おいらは映画を見に行った。

映画を見終わって帰りにラーメンを食べるのだが・初めて食べた時よりも美味く感じるようになっている・いつの間にか身体が気候風土に馴染んだようで・食べるごとに美味いのだ・博多ラーメンよりもこっちの方が好きになっていた!

部屋に帰ると信ちゃんは上機嫌だった<これで自信を持っただろう>

札幌観光はツイていた:7階の洋酒喫茶の時に声をかけてくれた一歳下の女の子が観光バスガイドだった、私がガイド担当の時に便乗すればお金は必要ないからと・定山渓温泉・支笏湖・小樽・藻岩山とかを案内してくれた。

札幌の生活で見た聴いたで感じたことがあった、博多・大阪・京都・東京よりも男女間の交際には開放的なのだ・素直にストレートだ~おいらなりに出した答えは、寒い時節が長く室内で過ごす時間が多い~からでは・・と

そしてここも去る時が来たようだ~信ちゃんが大阪に連れてってくれと言うので一緒に戻ることにした

<良いところだった札幌は・多いに楽しんだべ~>

大阪に戻ると

五郎ちゃんは北区太融寺に引っ越していたので又居候させてもらった、ここで電気工事の手伝いや無職の時があった、信ちゃんとビリヤードに行ったり、毎日阪急東通商店街をうろついた<何しろ人を見ていると飽きないのだ>いつも富国生命ビルの脇に立っていた。

するとある日に占い師のおじさんがテーブルを置いて開業を始めた、毎日会うので顔見知りになっ時におじさんが手相を見て上げようと言って無料で見てもらった、家庭運が薄い・剣難の相があるとか他にも色々と言われたが、晩年に振り返るとみんな当たっている・占いは古来より永遠に続いているが・理由はこういう事なのか・

8)高級クラブで毎月100万円を使うお客さん

そろそろ何処かで働こう・ここから10分ほど歩けば北新地という高級クラブ街がある、どんなところか行って見ようと昼過ぎに散策に行く、縦長の長い通りが数本あって多種多様な飲食店・花屋・スナックビルとかが軒を連ねている。

業者が酒を運ぶ姿がチラホラと<昼間は人通りもなく閑散としてた>これが夜になると一変するのだろうか、と、思いながら募集の張り紙を探しておこう・通りに面した建物の一階に募集が出ていた・『クラブむらさき』

夜の8時頃にもう一度行ってみた・昼間と違い各店舗の入り口には色とりどりの看板が出されてネオンも輝いている、が、なぜ~・・思ったほどに人影が少ない、全然少ない、たまにお酒の入った、一人、二人、三人組とかチラホラと数えるほどしか見当たらない<賑わいをまったく感じない>なぜなんだろ・この閑散な景色は・

一歩一歩と歩みながら思慮すると答えは出てきた・そうなのか~夕刻に勤務を終えてそれぞれが居酒屋・寿司・焼肉とか飲食店で腹ごしらえを済ませて、お目当てのクラブやスナック・バー・ラウンジへと足を運ぶ、この時間は皆さん店内でご機嫌の真っ只中なんだ、なるほど~そういうことだったのか・

翌日の16時に面接に行った・・クラブの扉を開けると毅然とした感じのマネージャーがいた、、仕事はボーイ・勤務時間は15時~23時・日曜定休・月給1万8千円・規則はホステスとは付き合ってはならない・テーブルに呼ばれた時は片膝をつく・モノを置くときは音を立てない・客席を監視するように見てはいけない、等の注意事項を聴いた。

ここはホステスが主役の場だ、ボーイは目立たぬように空気のような存在でいい、忍者のごとくスーと動くことにしよう、と自分に言い聞かせた。

縦長の店内は8人座りのソファーボックスが平行に並んで6つ、スタッフはママとホステス12名・男性はマネージャーとカウンターチーフにセコンドと私の4人、お客様が来店すれば・ご本人のボトル・グラス類・アイスペール・チャーム(スナック菓子)・アラカルト(手作りの一品)のセットをテーブルに運ぶ。

一時間ほどでチーフお手製のオードブルを・2時間半ほどでフルーツを運ぶ(そろそろお時間ですよのサイン)セット料金¥8000~+ボトル料金+追加飲食+指名料+サービス料になる。(当時大卒初任給1.9万円)

入店して10日目だった:この店一番の上客がご来店された<全員が色めき立ち表情が変わった>先生・先生と持ち上げる、当然である、お世辞三昧で優越感を与えれば次も来てくれる、テーブル席ではキャッキャッと賑やかの声が聞こえる、この先生は月に1~2度来店し<決まって百万円を置いて行く>ホステス全員の指名料を払っても飲食代金は百万円にはならない。

飲食代金の余りは男性従業員のチップになるという<本給よりもチップの方が多かったのは嬉しい誤算だった>この先生は著名作家だった、その後に当クラブのママをモデルに描いた小説が出版されヒットした、流石だな~生きたお金の使い方をしてたんだ~

3ヶ月が過ぎた頃にチーフに呼ばれた、ホステスのOOさんが日曜日に映画と食事をおごってくれるそうだ、どうする~<お断りすることにした>高嶺の花でも一度があれば二度がある<入店時にホステスと付き合ってはならないと聞いている>

ある日4人でご来客の一人から名刺を戴いた<日本を代表する大企業の課長さんだ>20代で若かった・こんな若い人が大企業の課長さんなのか~とよく見ると社名とその人の苗字が同じだった<まさかそれはないだろうと思ったが>

二度目にそのお客さんが:閉店後に食事をおごってくれると言うのでついて行くと<イタリアンの店だった>お腹空いてるだろうと・出された料理はスパゲティの上になんと300gほどのステーキが上に乗っかてる、えっ~こんなの食べたことがない<そんなこともあったが>その人はやはり社長の息子さんだった・後に社長~会長になられた・

北新地には英ちゃんも他のクラブに勤めていた:4ヶ月を過ぎた頃に英ちゃんが・今日、うちのマナージャーとおいらの店の前を歩いてる時に、お前・あの男知ってるかと指を差されたが、いいえ知りませんと答えると<あの男はな将来・新地を背負う男になるんや>と言ってたとか、へえ~あーそうなん~根拠が見当たらない・・

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当時:接待費は経費として認められていたのでお水は華やかで景気の良い時代だった、例えば大企業の社長が銀行に・当社接待用のクラブを開店したいので<彼に融資を頼みたいと言えば銀行は二つ返事でOKになる>1~2年もあれば返済できる。

女性にクラブをやらせる人と男性にやらせる人の二通りのタイプがいるが、男性にやらせる人は信用度の高い人である、クラブをやるにはホステスを集める能力があるかないかの問題で<後ろ盾があれば簡単にできる業界だった>

勤めて半年が過ぎ仕事も慣れて順調だった、そんな頃に実家から連絡がきた<帰って来いだった>実家でやっていた銭湯の釜炊きさんが辞めたのでやってくれとのこと・ん・・なんで・どうしてこうなる・

9)風呂場の釜焚き

今日から釜炊きをやらなきゃ~

6年ほど前だった~博多港近くで銭湯を始めたのは、義父が言ってた~ここには港湾労働者が多く働いている、仕事を終えれば風呂に入りに来るから<銭湯はやってゆけるはずだと>そして本業とは別に銭湯を始めることになった。

釜焚きの燃料は重油と廃木材とでお湯を沸かす釜があった、重油はバルブで配量の調整をすれば良いので楽だ、縦長の丸タンク上部に水槽があり、下から火を焚き付けて水温計と火加減を見計らって火を焚いたり、止めたりを繰り返す。

番台に座ってる者が時折り湯舟を見て、湯舟の水量が減れば各ブザーボタンを押す、アッ来たな~今度は男湯だ~と太いパイプに取り付けられたバブルを緩めて熱湯を送り出す、これが釜焚きの役割になっていた。

開業時を思い出した・入りきれない程にお客さんが来る日があった<プロレス番組だ>テレビが始まる頃には脱衣場は身動きが取れないほどに集まる・力道山が空手チョップで反撃を繰り出そうものなら・ウワッ~と歓声が上がる、庶民にとってイイ憂さ晴らしになっていた、14インチの白黒テレビでも一般家庭では手が出せない時代だったのでテレビが客寄せパンダになっていた<この風呂場の情景はまさに絵に描いたような昭和の風物詩そのものだった>

営業は15~23時だが:終えてからが闘いになる・湯舟・洗い場・脱衣場の掃除が始まる、特に湯舟はお湯を抜いても熱は残ったままでサウナ状態になっている、<この時に洗えば水垢も取れやすい>大きなタワシに石鹸をつけてでゴシゴシと全体の垢を落とすのだが全身が汗ダクに・・まあ~疲れる・・これはいつも母親がやっていた<母は良く働く人だった>

この掃除は深夜までかかる:それが毎日なのだ<母は愚痴の一つもこぼさない>義父はいつも通りに木製の風呂桶と椅子を洗えばそれで終わり、まるで子供のお手伝いのようだ・・

風呂屋は家族経営が多い:番台には交代で座るのだが、少年期に初めて座った時はマジで恥ずかしかった・見たくなくとも視界に入ってしまう・・こんなことが長期に続くといつの間にか女性の顔を見れば、濃いか・薄いかが解るようになっていた、そんなことは知らなくてもいいのに・・

釜焚きで戻った来た時は当然ながら気が沈む想いだったが<腐っても身にならない>今、何が出来るかと考え・東京にいる時にお客さんの会話について行けないことが多々あったので、語学勉強をやろうと小さな国語辞典を買って目を通すことにした、先々にこれが役に立ったような気がする。

子供の頃を想いだす

実家に戻るとどうしても<少年時代の重い出来事”が頭に浮かんでしまう>生まれは北九州の門司港だったが、父親は幼子の時に病で亡くなり、3才上の姉ちゃんとおいらを母が育ててはいたんだが<生活苦もあって8才の時に再婚で博多に来た>義父は従業員と二人で細々と銅・真鍮・アルミ金属等を回収しては合金会社に納入していた。

義父は酒飲みだった:小学3年生の時に6年生の姉ちゃんと二人で日本酒とビールを買って来いと云われ1Kmほど先の酒屋に一緒に行った<その帰り道だった>一升瓶とビールで10kg超えのカゴを片方づつ持つが子供には結構重い、季節は梅雨時で大粒の雨が降り出していた<姉ちゃんはキツそうだった>重さに疲れて・つい道端の電柱の支線(電柱を支えるワイヤー線)を握ってしまった・・

その瞬間に握った手が支線にくっついて離れなくなったのだ!おいらはビックリして支線にくっついた姉ちゃんを放そうと手を掴んで引っ張っろうとした時・ビビーンと強烈な電流が流れてきた・これは無理だ~

ウワッ~~誰か~誰か~呼ばなくちゃ~走った走った~近くの魚屋さんに駆け込み・おじさん・おじさん~お姉ちゃんが電線にくっついてる~すぐ助けて~助けて~~おじさんがゴムの手袋を持って現場に向かい<支柱から引き離したときには>もうお姉ちゃんは動けなくなっていた・・

《 おいらは泣きじゃくりながら家に向かって走る・走る・走った~ 》母に伝えた・・

・・母は三日三晩・放心状態で泣き崩れた・その姿は今も残像として想い浮かぶ・・

10)地獄の虐待が始まった

小学5年生・お姉ちゃんが亡くなって半年が過ぎた頃から・地獄を体験することになる>

この頃は二度引っ越して従業員3名は中古の1トントラックで納品物を回収に出廻り、お母ちゃんは3Km程先まで歩いて買い物に出かけている、義父と二人だけになる・家の前の道路脇に幅2mほどの小さな川があり、柳の木が立並んでいた、義父はその柳の木の枝を折って持ち帰って来た<悪い予感は当たった>素っ裸にされてバシッバシッと容赦なく鞭打たれた・

日々何一つとした逆らったこともなく仕事の手伝いもしてる>どうして、なぜ、子供のおいらに理由は解らない・その日だけではなかった・時を見計らっては鞭打たれた、これは地獄への始まりに過ぎなかった・・

ある日こっちに来いと:2階の部屋に連れ行かれた、手を出せ!と言われ・・

恐る恐ると手を出すと中指と人差し指の間に鉛筆や柳の枝を挟まれた、何をされるんだろうと思った瞬間に・ギャ~激痛が走った・痛い~痛い・痛い~小学生の小さな指間に鉛筆や柳の枝を挟み40男が思い切りに握り潰すのだ、痛いってもんじゃない、ギャーと声を上げた途端に頭をガンガンと殴られた、泣くな~泣くな・泣くな~泣くと殴られた・

歯を食いしばり必死に耐えるが<ガクガクと全身が震えだす>ム・ム、ム、ム~義父は握り直しては力を込めてくる・耐え難い無言の もがきと苦しみ が断片的につづいた・・

どのくらいの瞬間だったのだろうか、なん~にも憶えていない<放心状態になっていた>数日後に・・又来た~今度は指間に二本の鉛筆を挟まれた~握り潰す・必死に必死に痛みに耐えるが耐えられない、地団駄を踏む、踏む~どうにもならない、全ての記憶が無くなる

次は左手だ~と声が聞こえた・・差し出すと・同じように握り潰される、何が何だか解らない、泣くにも泣けない・・全身は震えて固まった・・

終えた後に指を見ると前回よりも酷い、赤・青・黒・紫色になってる<指が動かない>鉛筆を持つと手が震えて持てない、前回もそうだったが・夕食時に指で箸を挟めないので・手のひらで箸を握ってなんとか食べたが・・

三度目は宿題をしてる時に義父が来た<とたんに身震いした>恐怖で全身が震えだした・全身がブルブルと小刻みに震えて止まらない、怖い・死ぬほどに恐しい・そして死ぬよりも痛い・・耐えられない・・

指責めが終えて目を触ると泣くことを耐えても<目の縁は涙で乾いていた>泣くと殴られるのは・近隣に泣き声が聞こえるとマズイと考えたようだ・裸にして鞭打ちするのは傷の痕跡を気付かれないためのようだ・

<そして言われた・お前は勉強なんかするな~その日からは二度と教科書を広げることはなかった>

この日の夕飯時もやはり箸が持てなかった・手の平で箸を握ろうにも手が震えて握れない<ダメだ食べれない>サジを投げて食べるのをやめて部屋行き・ジッとしてるとお母ちゃんが入って来た、、

さすがに様子がおかしいと気付いたようだ<ちょっと手を見せてごらん>手を差し出すと、お母ちゃんの表情が一変した・・どうしたの~

心配をかけてはいけないと黙ってはいたが<隠せないので指に挟まれたことだけを話した>この時の母親の無念さ・絶望感は耐え難いことだったろう<おいらよりも辛く悲しかっただろうな~>お母ちゃん・ごめん・

泣き場所を探そう

あれほどの痛みと苦しみに泣くこともできなかった・<泣きたい、泣きたい、思いっきり泣きたい>

すぐ側に50m四方ほどの原っぱがある、草むらは高さ1m以上になっていたので外からは見えない<19時頃だった>草むらの中に入り草を折りたたんで座り込んだ、すぐに涙は出てきた、悲しい・本当に悲しい・自分が可哀そうでどうしょうもなかった・

つぶやいた・・お父さん、お父さん、僕のほんとのお父さ~ん、迎えに来て・僕を迎えに来て~ぼくはここにいるよ~見えるでしょ、逢いたいよ~どうして死んじゃたの<僕は何でもするよ・何でもできるよ・何処へでもついて行くよ>お願いだから迎えに来て・・泣いた・泣いた~又泣いた~・いくらでも泣けた・・

二時間近くなったんだろうか:涙は乾いて出なくなっていた・ふと気が付き空を見上げると・月が煌々と輝いていた・なんときれいなお月さんだ~・九月の満月だったんだ・涙の後は清々しい気分になれた・

きっと思いはお父さんに届いたはず・気が晴れた<お父さん・また逢いに来るからね>その後も二度泣きに行った、、もしお姉ちゃんが生きていたらこんなことには・・

お母ちゃんが大変だ~

数日が経ち、学校から帰った時に修羅場を目にした<言葉も無い>義父がお母ちゃんを殴る蹴るを繰り返してる、ウワッどうしよう、どうしよう、どうにもできない、おいらの力ではどうにもならない、又ぶん殴られてる・茫然として動けない・

あれ~何かおかしい・お母ちゃんが義父に向かっていってる・放つ言葉も・もっとやれ、すきなだけ叩け、もっと叩けとしがみついて殴られてる、どうして・・20分程が経過して義父も諦めたのか立ち去る、、

それから2週間ほどが経過した、又だ、又お母ちゃんが殴られてる、髪の毛を掴まれ引きずり廻されてる、ウワッ~それでもお母ちゃんは向かってゆく、もっとやれ・気が済むまでやれと・向かってゆくのだ・・

又10分程して義父は去った<おそるおそるとお母ちゃんのそばに近づくと髪の毛が引っこ抜かれていた>僕は何も喋れない・・お母ちゃんが静かに口を開いた<もう大丈夫だからね>・と言ったが、意味が解らなかった・

お母ちゃんのもう大丈夫だからね~<この意味が理解できたのはずっと後だった>お母ちゃんは我が身を投げ打って僕を守ろうとしたこと<私を殴ってください・気が済むまで殴ってください・その代わりに二度と子供には手を出さないで>私を私を殴ってくださいと向かっていってたのだ・

なんてこった・これがお母ちゃんの教育だった・ごめんなさい・ありがとう・おかあちゃん!

その後に指攻めは無くなったが、ある日にご飯炊きを失敗して右ほほを大きな手でバッシーンとヒッパカレた時は4mほど吹っ飛んだ、いつも恐怖心は抜けることはなく・毎日が予断を許さないとの思いはずっと・ずっとずっと~続いた・・

今まで事故やケガは多々経験したが<生涯あれほどの痛みは二度とはない>ケガや事故は予期せぬ出来事であり・痛みは後からやって来るが・事前に察知できる痛みは脳が先に知る・感受性も高く脆弱な子供には耐え難い・・

P-2に続く

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