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21)ボクシングを習いに行こう

2年生の時に一つ手前の駅に九州産業大学が開校した:ひょとするとボクシング部があるかもと・途中下車して大学生に尋ねると有るよとの返事だった・それでは見に行こう・

学内に入りウロウロすると大きな講堂があった:中では各種クラブの部員達が練習をしている<キョロキョロとする>見つけた~サンドバックとパンチングボールだ・8人程が練習をしている、自然と足が向いて行く・・

キャプテンらしき人を見つけた:ペコリと頭を下げて言った<隣町の専門学校の者です>僕にもボクシングを教えてもらえませんか・・

<キャプテンはイイよと言ってくれた>明日から来ます・宜しくお願いします・やった~これで強くなれるかも~

翌日から通った:数キロのロードワークで走っては止まり・3分間ファイティングポーズをとりジャブ・フック・ストレートパンチを繰り出す、この連続で最後は講堂へ走って戻る、キャプテンは西日本学生チャンピオンだった<流石にスタミナも体力をある>皆さん汗だくクタクタでついて行けない・ところがキャプテンに続いたのはいつも僕だった。

パンチを繰り出すときはスピードがなによりも武器になる・スピードを身につけるには・速くパンチを出すことよりも<速く引く>ことにあると教わった《なる程》

二月ほどが過ぎた:練習用のグローブとヘッドギアをつけて実戦形式でスパーリングをやることになった、初めての3分はすごく永く感じた、緊張もあり双方ともが全力を出し切った戦いなので終ればぐったっり・喉もカラカラになっている・ところが一分の休憩で体力を取り戻せる<これがロードワークの成果なのか>

三度スパーリングをやったが:練習生の中では僕が強かった、これは家業手伝いの時にボンゴシハンマー(4~5kg)で大き目の鋳物を溶解炉に入れるサイズに叩き割る作業で少しばかり力が付いてたのかも・・

そんなこともあってかキャプテンが特待生に推薦するからうちの学校に来いとは言ってくれたが<僕には精神的な余裕がない>家から一歩外の出れば元気だったが<家の中では萎縮して口を利くこともなく:早く家を出たい>

6ヶ月でクラブの練習には行けなくなったが<これで体力も精神も自信が持てる様になったような気がした>大阪に出てからも二か所のジムに汗を流しに通ったが、この体験は自分を擁護してくれるようになっていた<ありがたい>

アア~モッタイナイ

この日は:仕事の手伝いがあった:大量の金属古物品が運ばれてきた、柳川の武家蔵の整理品とかで、その中に江戸時代の銅鏡が200枚以上・天保通宝や寛永通宝等の古銭が50kg以上、他にも武具等や珍しい金属類が色々とあった、

銅鏡を磨いて顔を映してみよう・ピカピカに磨いて顔を見ると鏡ほどではないが顔はキレイに認識できる、江戸時代の人達はこの銅鏡を見ながらほくそ笑んでいたんだ~

これは古物や古銭商に売却すればもっと高く売れるかも知れないと・天神町の古銭扱いの店に見に行った、同じ物がケースに並べてあり価格が書いてあった・家に帰って古銭で売った方が儲かるよ・と言ったが、選別が面倒なのか相手にされなかった・モッタイない~、結局は単なる金属類で合金製造会社へと運ばれていった。

22)家を出る時が来た

季節は過ぎ:専門学校の卒業が近づいてきた、義父が大阪の知人に頼んで就職先を見つけてくれた<フナイ電機だった>結局は家を追い出されたんだが・良かった~喜びの方が大きい・この家から卒業できるんだ~

家での生活では<泣いた時も多々あったが・笑う時もあったと思えば・両方合わせてゼロになる>

新聞配達やバイトで貰ったお金を自由に使えたのでスケート靴を買ってアイススケート・魚釣り・映画・一人レストランにも行けて不自由はなく・モノへのコンプレックスはない・ありがとう・

心残りは一度でいいから義父に褒めてもらい・頭を撫でてほしかったな~

<やっと家を出る時が来た・列車の中ではワクワク気分だ・解放された・自由だ~>

《お母さんは義父を一度もお父さんとは呼ばせなかった》

23)トラウマを抱える人生に

家を出てから気が付いた:何でもない時にも<暴力を受ける姿が頭に浮かび出る>自由時間・仕事中・睡眠中でも関係ない<意識していなくとも離れない>今では一生続くものと承知している・

トラウマ:この病名はオーストリアの精神科医フロイトによって知られるようになった、心的外傷として悪い記憶が繰り返しよみがえる等の症状だそうだ。

最初にトラウマとという病名を知った時は<日本語ではないかと思った>仔馬の目の前に牙を剥いた虎がいる・まさにその構図が思い浮ぶ・・

<義父の事を憎むとか恨むとかの心の整理はとっくに終わっている・心の葛藤もない>

母子三人を引き取って学校にも行かせてもらった<ご飯も食べさせて貰い生きて来れた>恩義の方が勝る<人を恨めば時間は止まる>前に進めなくなることを知った・過去よりも未来だ!

僕はまだ救われている:世の中には実の父母から虐待を受けている子供達がいる<この子達は悲惨だ>未来も希望もなく生き方をも見いだせない~<家庭内暴力は何処へも逃げる場所がないのだ>

ニュースでそんな子供達が放送されると腹が立ってしょうがない・涙が出てくる・もしその様な現場に出くわしたら黙ってはいられない・

<父母と言うのは心の中の神として存在し・生きる希望を与え・支えてもくれる・生涯を供に生きるもの>

両親の離婚でどちらかのパートナーが変われば<本来の性格と好みは混合され・特技もやることも変わる>勝手に離婚されては子供には大迷惑なのだ・

僕は自分の欠点を知っている<可愛がって貰えなかった人は・可愛がる術を知らない>甘えを知らないので可愛くない、人を押しのけて前に出る事はなく・大した事は出来ない・やろうとも思わない<物質欲よりも精神欲が上回る>ただ友達は大切にする・当たり前のことだが裏切らない・家庭運のなさは友達が心のゆきどころになる・

孤独に育てば人様に頼ることや相談も出来ずになんでも一人でやってしまう、誰かが何かをやりたいと言えばとがめない、少々悪いことでも好きなように経験をさせて学ばさせる。

境遇や環境で人の性格・思考は備わる<友人や恋人ができたなら>生い立ちを聴けばその人の性格・好みなりが多少は読みとれる、それを理解すればより仲良くやってゆける。

風呂焚きも5ヶ月が過ぎた

少年時代を色々と想い出せて楽しかった・やっと釜焚きさんが来てくれることになり・大阪に戻れる・ここでの賃金は貰えないと解っていたのでお母さんに汽車賃だけ貰って戻った。

24)それはデートクラブだった

仕事を見つけよう

どんな仕事が向いているんだろうと考えた・結果は<向いている仕事もなければ・向いていない仕事もない>やって憶えて好きになる・そして楽しくなる・何をやっても同じなんだ~

<そう考えながら・幼なじみの英機君が京都の西京極に居ると聞いていたので・会いに行こうか>

彼はお姉さん夫婦の所に住み・仕事は商品の配送ドライバーをやっていた・久しぶりに会えての談笑は嬉しかった<なにか仕事はないだろうかと尋ねると>近くの町工場で募集してるとか・何でもいいからすぐに働こう・

仕事はケミコート:鉄板を酸性溶液(硫酸や塩酸)に漬けて洗浄・除去する作業だった、仕事は楽だったが硫酸のプールの中に落ちると一発であの世生きだな~と思った。

阪急電車で梅田から西京極を半年間通勤した:京都市内は路面電車が外周を走っているので解り易い、さすがに観光都市だけあって観るところは盛沢山だが、コーヒー一杯が千円では喫茶店にも入れない<物価も観光料金で高かった>

半年働いたお金で北区から南区に引っ越しすることにした<仕事も多そうだし・面白そうだ>徒歩圏内で浪速区大国町のアパートを借りた、4畳半・押し入れ付き・風呂なし・共同トイレで家賃¥5000だった。

《仕事はまだ水商売に興味があった・人との会話や人間模様を垣間見ることが・やはり楽しい》

繫華街に出て宗右衛門町付近のスナックビル等を廻り募集の張り紙を探すがコレといった店が見つからない、御堂筋を歩いていると50歳くらいのおじさんに声をかけられた<お兄ちゃん今仕事はしてるの?>手伝ってくれないかと言われ、収入になるならとついて行った。

元町の路地を入ったアパートの一室は6畳一間で30代と20代の女性二人がいた、そこでおじさんに手渡されたのは名刺サイズに手書きした紙切れ100枚・読んでみると『お逢いしたいのみち子と電話番号』これしか書いてない。

これをチョットましな乗用車のドアーの隙間に挟んでくれないかと・なんだそれだけでいいんだ簡単だな~これで日当千円も貰えるんだ<さっそく出かけて車のドアーに挟んで廻る>100枚は数時間ほどで無くなったので又貰いに行くとおじさんと二人の女性が紙切れにせっせと手書きしている(配布が速く手書きが間に合わない)

このパターンを毎日300枚ほどを車に挟んで廻った、時折り御堂筋~梅田まで往復し、昼間のビジネス街で働いちる人達の様子や風景を眺めつつ観察を楽しんだ。

配布しだして一週間も経たないのに忙しくなったらしく・一月後には20才の新人女性も入店した・以前にはおいらと同年代の近所の男とおじさんとでチラシを撒いていたが暇だったみたい<近所の男は怠け者の顔をしていた>おじさんにとっては良い拾い物をしたようだ<何しろおいらは健脚だから良く歩く>

《ここの女性たちが何をやってるとかは考えることもなく・気にもしていなかった》

4ヶ月が過ぎた頃にチラシを貰いにアパートに戻ろうとすると近くに男性3人と警察官がいた、ひょっとするとヤバいかも知れないと思い・黙って帰ることにした・その後は行くのを辞めた。

《後で知った:デートクラブと言うらしい》

売春防止法

売春は人類最初の仕事とも言われている:日本では江戸時代からずっと公認だったが戦後にアメリカGHQの要望もあり法制度が実施されたようだ<これは双方が納得行為なので被害者は居ない:合法の国もある>今もスポーツ誌とかに広告は載っているが・警察では年2回程の取り締まり月間に検挙に動くとか、もしこれ等を全て<検挙・廃止>にすれば性犯罪が増加するので暗黙に公認されている《AV&ポルノも然り》

次の仕事を探そう~

新聞の募集広告を見るが中々その気にならない、千日前をウロウロしてると赤電話の設置場所にチラシが散乱していた<電話をかければ女性とデートできますと書いてある>またかと思ったがココはデートだけのようだ・一番下にチラシまき募集中と載っている、他に当てもないし・手っ取り早いしな~

電話をかけて待つと30代の男性がやって来て小さなビルの中の事務所に案内された・室内には大きなグラフが掲示されている・下に11名ほど名前が書いてある<渡せれたチラシに番号が押してあり>電話をかけて来たお客さんに番号を尋ねてキャッチ数が解る<それを日々グラフにする>月単位の歩合制で賞金もあるとか・取りあえずやってみよう

チラシ撒きは簡単だ、足を使うだけなのでおいらは苦にならない・ひと月後のグラフには二位を1.5倍離してのダントツ一位で給料は7万円ほど貰えたホクホクだ~(当時の平均給与3万円弱)

その日も難波周辺にチラシを撒いて周回していた<ちょっとひと休みしよう>千日前の赤電話付近に立っていると横に可愛い女の子がいた・あっ~思わず声をかけた・明日の約束をした<ワクワク気分で一日が終わった>やった~。

25)同棲生活は始まったが

今日は初デートだ・ウキウキしながら鏡に見入る・約束の喫茶店で会って付き合いはスタートした・毎日がごきげんだ~、ひと月後に引っ越しをすることにした、二人で住むには生活に便利な所がイイ<鶴見橋商店街にあるアパートに決めた>家賃7000円<同棲生活が始まった>おいらはもうすぐ22才・彼女は18才・いづれはこの人と結婚をして子供を育てることになるのだろうかと・そんな仲睦まじい家庭が脳裏に想い浮かんだ・母にも紹介しないといけないな~

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仕事は将来喫茶店でもやるかも知れないと思いソフトドリンクの勉強をしておこうと難波の喫茶店で働いた、彼女は近くの喫茶店で勤めることに・・

映画を見に行ったり海水浴にも赤目四十八滝も行った、夏には二人揃って浴衣姿で祭りの夜店を闊歩しながら時節を楽しむことができた、彼女は従順で何事にも一生懸命に取り組むタイプだったのでなんら不自由もなく順風満帆の日々を過ごせた・楽しかった・

そうこうして一年が過ぎたある日曜日に彼女は岸和田市の親戚の所へと朝から出かけて行った、ところが夜になっても戻らない、どうしたんだろうと待ち続けて朝になる<何か悪い事態でも起こったのだろうか>頭の中は心配と不安で居ても立ってもいられない<よく考えると実家も知らなかった>焦燥感だけが駆け巡る・そして4日後にやっと彼女の友人が知らせに来てくれた。

帰りに交通事故に・・<大切な彼女は帰らぬ人になっていた>言葉を失った・

線香を上げに行くとおばあちゃんが一人で仏壇の前に座っていた・彼女には両親がいなかったのだ<なんと・苦労して育ったんだ~>一生懸命に生きてきたんだ・なんでだよ・・なんでだよ・・泣いた・・泣いた・・

それからは茫然自失の日々が続いたく自分が見えない・何をやっているのかわからなくなっている>仕事も辞めて部屋にこもりうつ状態になっていた、4ヶ後にやっと働きに行ったが続かない・一日や三日で辞めた店もあった・しっかりしなきゃと自問自答をする<そんな状況が半年ほど続く・・

そんな時・札幌からのしんちゃんがウチの店に来ないかと誘ってくれた・笠屋町のスナックはマスターとチーフと佐藤君と4人になる、20時~朝の5時までやっている深夜族の店にだった、他の飲食店を終えてからのお客さんやオカマさん・時々見知らぬ芸人さんとかもいた・

その中で後にテレビのMC を務め<物知りとして一世を風靡したK・龍太郎さん>当時は24才:現在は引退して隠居生活をしているとか、この人はいつも年輩の男性と二人で来店するのだが<カウンターには座らない>従業員や他のお客さんと会話を交わすこともない・いつも角のボックス席で周囲を見渡すように座っている。

年輩の男性は教育係に思えた<夜の事・店の事・お客さんの事・色々と解説をしてる様だ>英才教育をしてるんだ~なるほど・こうして世の実態を見せられて教育を授かってるのか~客観的な物知りにはなるんだろう・が・実践的ではないな~これでは表面的には博識だが・人の中身を知ることはできないだろう・この店も4ヶ月で辞めた・

次は宗右衛門町通りの店で働いた・この店は安藤君に誘われた・店長はスペイン系の26歳で長身の男前だった、女性従業員が4人いたがいつも店長や安藤君とキャーキャーと騒いでいる、お客さんそっちのけだ~店のことやお客さんを楽しませることなど考えてもいない。

なんだこの店は<規律なんてはどこにもない>経営者は店長に任せきりで顔を出さない、男前の店長の顔を見るためにお客さんは来ない・店長の選択を間違っている・何も学ぶべきものがないのでここも3ヶ月で辞める。

26)有名料理店が洋酒喫茶を開店

徐々に自分が見えるようになった頃に友人の中山君が<宗右衛門町の老舗料理店大和屋が大型洋酒喫茶をオープン>すると言うので一緒に働くことになった。

従業員は支配人・主任・バーテンダーを含めて20数名を東京から引き抜いて来たとか、広々とした店内の中央に眩しく光り輝く豪華なシャンデリアあり<その下に50名ほどが座れる大きな丸カウンターがあった>他にも丸カウンター4つがあったが同じようにシャンデリアが上部で煌々と光っている、華やかな店内だ~

店内はとにかく明るい・奥の方は白壁だけで絵も花も無くおいらには殺風景に感じた、お客さんが酒を飲むには落ち着かないだろうな~酒を飲むにはダークな方が良いのだが<これが一流老舗料理店の発想なんだろうか~>

開店前日にTVの人気番組:11PMの生放送で藤本義一さんが店を紹介する:華やかなオープン披露になった:東京のバーテンダーがメインで大阪のバーテンダー4名は奥のカウンターに回された。

2週間ほど経った頃に支配人からおいらと他3名が呼ばれた、従業員の中に指名手配中の者がいて寮に居るから捕まえて交番に連れて行ってくれと言う、気乗りはしないが仕方なく地下鉄に乗り4人で寮に出向くことに。

寮に着いて3人に言った、4人では騒々しくなるのでおいらが連れ出してくるからフォローをしてくれないかと<部屋に入ると逃げる準備をしていたようだったが>ちょっと付き合ってくれと外に出たところで彼の左腕をおいらの右腕に絡ませて交番まで連れて行った。

お巡りさんに指名手配者ですと引き渡す<誰かが署名をしてた>彼には悪いことをしたな~と感じる

ふた月が過ぎた出勤途中に後ろから声をかけられた、振り向くとデートクラブのアパートに時々顔を出していた男だった、やあ~久しぶりだな~今何をやってるんだと聞かれたので<店の名前を言うと>解った飲みに行くわ~と言う。

内心は来なくても良いのにと思っていた<彼の言葉遣いは暴力団特有の喋り方だった>どうもこの手の喋り方は威圧感があって好きではない、ひょっとするとこの人暴力団なのかな~と思いつつ別れる。

それから一週間も経たなかった:部長に呼ばれて退社してくれと言う<当店は暴力団と付き合いのある者は雇えないからと>話を聞けば先日会った男が来店し、この店にワシの友達が働いているんや~と言ったとか・

アレコレと言い訳をしてもしょうがないので<解りました>・店ではやっと中央のメインカウンターに抜擢されたのに<ガッカリ>こんなこともあるんだろうな~人生には・また仕事を探さなきゃ~大変だ~。

27)小さなスナックに勤めた

さあ~仕事を探そう~何処でもいいや・新歌舞伎座の裏を歩いていると古く薄汚れた小さなビルに募集の張り紙があった、地下1階に降りてスナックのドアーを開くと<8席だけのカウンターに着物姿のベッピンママがいた>クラブ上がりのようだ・初めて店を開くようだがママの雰囲気と店がマッチしていない・・

開店準備に機嫌よく動き回る姿は見てて楽しい・彼氏はボンボンタイプの会社員風でスポンサーのようだ~、開店日にはビルの入り口に6つの花輪が飾られいる・最初の一週間は忙しかったが次の週からは数えるほどしかお客さんは来ないようになった、建物は古く・店も狭い・ママと不釣り合いだ《どうしてこんなところを選んだのかな~》

店が終われば地下鉄は終電を過ぎているので毎日タクシー代¥500を貰ったけど歩いて帰ろう・これだけでご飯が食べれる、有難い・・

閉店後にナイトクラブに連れて行ってもらった事がある・アイ・ジョウジが来演していた<マイクなしで硝子のジョニーを歌った>生の声が店内に大きく響き渡る・すごい声量だ~やはりプロ歌手は違うんだな~。

このスナックで学ぶことは少なかったがこれも経験だべさ・3ヶ月が過ぎて店を移転するのでどうすると言われたが、やはり小さな店は合わないようなので辞めることにした。

28)義父がとった驚きの行動は

店を辞めて間もない頃に弟から連絡が来た、おやじの次男が車に跳ねられ瀕死の状態でもう駄目だから帰ってきてと・おいらは家族扱いされていなかったが取りあえずは行くことにした<帰ると面会謝絶で病室には入れなかった>

この時の義父の行動にビックリ

どうしても生き返らせくれ<日本一の脳外科医を呼んでくれと院長に迫った>院長は数珠つなぎであっちこっちに連絡しだした・結局・東京から即時にムーンライト飛行機で名医をを呼ぶことに成功したのだ・名医は無事手術を終えると・そのままトンボ返りで東京へ戻った・こんなことができるのか~スゴイ!

次男は一命を取り留め少しの後遺症で普段の生活に戻れる様になった<名医への報酬は200万円だったとか>200万円と言えば以前にも:佐藤総理が北九州市に来た時に200万円献金したと自慢げに言ってた記憶がある。

この事故のことは新聞に掲載されたようだ・それも交通事故ではなく保険金の2億円が当時としては破格で話題になったとか・なにわともあれ葬式がなくて良かった・大阪に戻ろうっと・

29)ミナミに洋酒喫茶ができた

宗右衛門町に大型の洋酒喫茶がオープンしたと聞いたので面接に行き働くことになった:100坪で240席はあった・カウンターが6つありバーテンダーは22名ほどいる・カウンターごとに売り上げ競争があった・入店して2カ月後にカウンターチーフになり3ヶ月でなぜか総チーフになっていた。

総チーフになったので何かやらなくてはと<今までに学んできたことを教えることにしよう>開店前の点呼時に時間を貰って<酒の知識・技術・マナーを教えテストも行った>お客さんとは積極的に会話を交わすように勧めた。

喫茶学校を卒業した吉田君は実践では何もできなかった:従業員には最初に北区『こだま』で学んだようにサントリーやアサヒビールへの工場見学へも行った。

この店は立地場所が良いので毎日何百人もの来店客があり繫盛している:男子バーテンダーなので女性客が6割ほどになる、日々仕事に追われてる若い男性よりも若い女性の方が遊びに行く時間があるんだな~と感じたが・女性は生涯のパートナー探しも兼ねてるかもしれないとも考えた・

<店は忙しく接客できないお客さんには相性を見極め:男女の一人客や二人客同士に声を掛けて組み合わせた>

男性側におごって上げて下さいと頼むと皆OKが出るので簡単だったし喜んでくれた、この縁で結婚をした人達がいる、世の中解らないもんだべ~

これで仕事は楽になり・カウンター競争の売り上げはトップ・手当は食費になった・ありがたや・ありがたや・

おいらはお客さんの自慢話を聞くようにしている:なのでそれとなく話を引き出すようにもってゆく、お酒を飲んで自慢話をするお客さんの表情が実にイイ~のだ、平和で楽しい~これで又来てくれる・チップも良く貰った、他のバーテンに聞けばチップなんて貰ったことがないという・そうなのか~<会話をするように勧めた>

土曜日だった:満席の時にざわめきと女性客の驚きの声が聞こえたのでなんだろうと見ると、50代の男が席を立ちコノヤローと言って刃渡り12cm程のナイフを振りかざしているではないか、ありゃ~りゃ~これはいかんと慌ててカウンターを出て、半分笑いながら男の傍にゆき言った。

なにやってんのあんた:危ないでしょ~そんなものを振り廻して・ケガでもしたらどうするんだよ~さあーさあーなおして直してと・・彼の手を取り促した、こちらが笑っているんで男はキョトンとした顔でナイフをベルトのところに戻す、あっけにとられたよな表情をしてる、

会計伝票を手渡し・もう来なくていいからネ~と付け加えておいた。

こういう時に廻りが騒ぎ立てると余計に興奮し我を失い、何をしでかすか解らなくなったりもする<まあ~何事もなくて良かった>おいらは子供の頃からナイフや金属類は見慣れていたのであまり怖くはなかっのだ。

日曜日に32歳∔22歳位の姉妹が来店した:お姉さんが妹は綺麗でしょ・と言うので、ええ~綺麗ですねと返す、確かに大人しい感じの女性で中の上だな~と感じる、翌週に来た時に妹と結婚してくれという‥答えようがないので笑ってその場をごまかしたが、三度目にも又結婚してくれという<どうやら冗談ではなさそうだが>

根拠も理由も解らない・そんな言葉だけで結婚する人って要るのだろうか?<店内ではなく場所を変えて人情的な話でもすれば心変りもあるかも知れないが・5回目過ぎては来なくなった。

30)お水の従業員を誘うには

似たような話がある:梅田の”洋酒喫茶 日航”のマネージャーが来店した<休みの日でもイイから店に来て指導してくれないか>と言われたので掛け持ちで行くことにした<日航は女性客が多く流行っている店だった>

40代前後の女性二人が来店し<ねえ~こういうお店の人ってお金を出せば付き合ってくれるの~>と聞かれ・その様に問われれば:ええそういう人もいると思いますよ・誰か決まればお伝えしますよ<このような回答になる>

こういう時は:私ね~あなたが気に入ったの(又は好みなの)何時に終わるの・付き合って・コレだけでいいのだ・

<これは男性がキャバクラ・ガールズバー・スナックとかで女性を誘う時も同じになる>

お目当て女性に《俺、あんたが好み又は好き・今夜付き合って》もし今日はダメの回答ならほぼOK・今日はダメでも明日はOKという意味<じゃあ~明日来るね>コレで決まり:嫌ですの回答は辞めるべし:彼氏とか他に事情がある。

もしOKの返事なら<どこそこで待ってるからと伝え店を出る>ダラダラと長居はしない:メールならで何々ホテルで寿司を買って待ってるから:これだけで良いのだ<無駄話をしない・酔わないがコツになる>

<やや上から目線の方が高率的:理由はペコペコする人と付き合っても楽しくない>

<要点は他の人に知られないこと>初対面の方が確率が高いのだ《雑誌とかで3回目とかとあるがそれは実態を知らない記者の空想》店が信用になるので約束をすれば来てくれる《女性が従業員を誘うのは安全だからの理由がある》

お金を渡す人と渡さない人の違い

終わって帰り際に車代と言って一万円を渡す人は長く続く・2~3万円をハイお小遣いと渡す人は長くは続かない、10万円とか渡す人は遊びも世の中も知らない人<全くお金を渡さない人は結婚したりもする>要は考えてる事とは逆なのだ・

この店でやっと半年が過ぎた

仕事も給料も問題なく部下との信頼関係も上手くいってる、日々色々なお客さんと接して楽しい、先の事は解らないが充実していた。

そんな時だった・母から連絡が来た:オヤジが戻ってくるようにと言ってる<もう勘弁してくれと断ったが>再度の連絡の時に・叩かれるからと言う・

<人の人生をどう思ってるんだろう><なんとも思ってないんだろうな~>

しょうがない~勤めを辞めて帰ることにしよう:先が見えなくなった・・

P-4に続く

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