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目次

31)呼び戻された理由に愕然とする!

博多に行くにしてもアパートの家賃が問題だな~部屋を持っていない哲チャンに頼んでみよう。

良かった・戻って来るまで家賃持ちで住んでくれることになった・肩の荷が下りた・部屋に熱帯魚を飼っていたので餌やりと水補給を頼んでおいた<これで安心だ>

新幹線は料金が高いので乗りなれた急行列車にした・走り去る山々の景色を眺めながら<どんな理由で呼び戻されたのだろうか>と考えながら・・エゾ松に包まれた駅弁の香りを楽しみ<旅の余韻に浸る>

ボストンバッグ一つを手に持って実家の玄関でただいま~と声をかけ足を踏み入れた・さっそく義父に会って・用事は何ですか・と聞くと

中洲でクラブをやっている人にお金を貸してある<今は自分の店になっているが>返済が終えるまでその人に店長として働いてもらってる<売り上げをごまかさないか見てくれ>だった・

えっ~それなら伝票に番号を書き入れればいいんじゃないですかと言ったが<内心では・ア~ア~な~んとくだらない理由なんだと呆れた>おいらは義父には一度も逆らったことがない・今更言葉を付け加えても・・やるせない・

どうやらこの時の失望感がその後の生き方に影響を及ぼしたような・・

『気持ちを切り換えよう』何事も経験を~楽しもう~

翌日からクラブに出勤した:マネージャーとは名ばかりでやることはレジ係とウエイターだった、とりあえずは会計伝票に小さく暗号の番数を書きを入れることにした<伝票紛失はすぐに解る>万一に店長が売り上げをごまかしたとしても義父に知らせることはないだろうと・仕事についた・

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博多・中洲

店にはホステスが10名とウエイターが一人、キッチンは年増のホステスがやっていた・おやじの仕事の知り合いとかも来店して結構繫盛してる・日が経つにつれ店長は外出したり来ない日もあった、次の仕事の準備もあるだろうと同情をする、2週間が経過し給料は貰えないと解っているので<売り上げから週5000円を戴くことにしよう>

そのお金で閉店後に中洲に飲みに行った:店はモンシェルトントン・素敵なおじさま中央に60席ほど座れる大きな白色丸カウンター>壇上には純白のピアノが置いてある・カウンター前の周囲には水が流れ多くの生け花が飾られていた。

予定時刻になればピアノ演奏がある:女性スタッフは天使のような純白衣装に包まれている<品があっていいデザインだ>驚いた・こんなに洒落た店があるんだ~雰囲気だけで魅了された:その後にこれ以上の店は見たことがない。

クラブ仕事も5ヶ月近くになった

長居をしても目標がなく刺激がないので<義父に今月中でもう良いでしょうと頼んだ>

クラブ内では酒に酔うと用もなく話しかけてくるホステス(幸ちゃん)がいた<冗談で言ってみた>大阪に戻ることになった一緒に行くかいと言ったら私も連れて行ってと返事がかえって来た。

予想もしてない返答だ<幸ちゃんも現状から脱皮をしたかったのだろうか>これが若さなのか・一週間後には二人して大阪行きの座席に座っている<彼女は21歳だった>

大阪の部屋に戻り・気になっていた熱帯魚の水槽を見ると、なんとエンジェルフィッシュが斜めに傾いて泳いでいた、8㎝ほどしか水が残ってなく背中のヒレが浮いている・哲チャンのズボラな性格は知っていたが・まさかここまでとは・驚いたが笑うしかない・それでも生きていた(ネオンテトラやグッピーは減っていた>

この部屋は哲チャンに継続してもらい、翌日に新しいアパートを見つけて住むことにしよう。

幸ちゃんはスマートで容姿も良かったので高級クラブに勤めることにした、中洲の女性は接待上手だ・おまけに博多弁なまりが新鮮に感じるのだろうか、大阪には九州出身の経営者も多くすぐに売れっ子になっった、景気も上昇傾向にあり接待費も落ちるので新規客や運もあってか二月が過ぎると口座持ちのホステスになっている。

あっと言う間に高給取りに・そして幸ちゃんは言った<あんたは仕事ばせんでもよかよ・私が稼ぐけんネ>博多女性はこういう気質を持っている・・

子供の頃にも何度か耳にしたがある・道楽者の亭主を持つ奥さんが《うちの亭主には好きなようにさせてやるけん、それで良かとよ》と、この言葉の裏には面倒見という優越感があるように感じた。

それからは一日一万・月30万円を小遣いとして渡されることになる<甘えることにしよう>まずは車の免許を取ってあっちこっちへとドライブに連れて行ってあげよう・決めた~

32)自由奔放な人生が始まった

<時間とお金に不自由しなくなった・さあ運転免許を取りに行こう>

取得方法を調べた

教習所に通えばお金と日数がかかる:だが一発試験(飛び込み)ならひと月で免許が取れると知り、信ちゃんと健ちゃんを誘い三人で門真運転試験場へと行った、最初に視力等の適性検査を受け学科試験も無事に合格(健ちゃんは不合格で再挑戦)

次回の実地試験を申し込んで帰る際に試験場前の練習場で30分を、翌週の試験日も早めに行き練習場で30分練習をして実技試験を受けよう・練習を終えて試験場の予定コースを歩きながら要点を記憶する。

順番待ちの時に周りからの会話が聞こえた<どうやら一回目での合格はないらしい>中には10回以上も通ってる人もいるようだ・そうなんだ~

さあ~順番がきたぞ・前の人が運転する際に後部座席に二人乗せてくれたのですごく参考になる・この日の一回目は予想通りに不合格だった・次回の申し込みを済ませ<その足で練習場で60分乗って帰った>

二回目も30分練習で挑んだが不合格<これも折り込み済みなので気にしない>帰りは60分練習して帰る。

<三回目だ~今日は絶対に受かるぞ~と言い聞かせて30分の練習を済ませ・いざ試験場へ>

この時も前の人の運転を後部座席でじっくりと観察をする:一人目は下手だったが二人目は上手かった・でも落ちた・彼は首を傾げて納得がいかない表情をしていたが<なんとなく理解できた>彼は上手だが同乗者に安心感が持てない・運転が忙しすぎるのだ・

それならば・乗車してる人にショックを与えないように<アクセルとブレーキを滑らかにスムースな運転を心がけよう>結果・合格だ~やったね~3回目は予定通りだ~

取得まで28日・交通費・練習費も全て¥9400で収まった、信ちゃんは6回で合格・健ちゃんは学科が苦手だったので教習所で免許を取得した・

最初は中古が良いかとスカイラインを買って友達と幸ちゃんを乗せて天橋立に行ってみた、三ヶ月後に新車の2ドアギャランを買い近畿一円から富士山へとドライブや自由気ままな人生がスタートした・少年時代と真逆現象が起きている・

遊び仲間を作ろう

一人だけ楽をしてもしょうがない:彼女のいない友達を喫茶店やスナックへ誘ってはこれはと思った女の子に声をかけて交際を仕掛けた<彼女達も高級クラブで働くことなった>そうなるとクラブ内でも互いにお客さんのヘルプができたりで有利になる、3人の友達が上手く行った。

いつのまにかおいらは悪友になってしまったが、中には一生の伴侶とした英ちゃんもいる<人の縁は解らない>これで遊び仲間が出来た・時間があれば麻雀にも明け暮れた、やり出したら止まらない・世の中にこんな面白いゲームが有ったのかと、麻雀の麻は麻薬の麻だと言うが正にその通りだった。

麻雀のプロがいた

雀荘にも通った、此処には色々な人達が集まっている・ある日よっちゃんと40代の八百屋さんの主人と対戦したが、この人には逆立ちしても勝てないと思った、この人の目は斜視だったので視点の予測がつかない<二度対戦しコテンパンにやられた>この人は麻雀牌が透けて見えるのではないかと不思議な思いを感じた、

負けることを承知で三度目はおじさんの目の焦点や指先を観察をすることにした・やはりおいらの並べた牌とか他の人の牌とかも全部見透かされているように感じる、その後にこの人とは誰もが対戦をしないと聞いた・誰も勝てないのだ・もしおいらがこの人なら3~4回に一度は知って負けるだろうな~・と、思った・まあこんな人もいるんだ~

魚釣り三昧

潮岬へは一人か健ちゃんと行った<深夜に車で出発~早朝に潮岬に着き>駅前で釣り餌を買い岬の待機所で船頭さんを待っ、夜明け前に懐中電灯を持った船頭さんが崖の下の船着き場まで誘導してくれる。

降りると12人乗り位の渡し舟が何隻か待ち受けている、釣り客はお目当ての舟に乗り<夜明け時刻の合図>とともに船は岸から離れ各磯へと向かう

磯に着くと朝陽がゆっくりと登ってくる・太平洋の地平線と夜明けの光景を眺めながら海面に釣り糸を落とす・大漁に期待するがいつも釣れない<二人しか上がれない小さな磯>も含め全磯に上がった、いつしか常連客になって行った。

渡し船”はまゆう”の船頭さんに家に遊びにおいで<旨いウミガメ料理を食べさせてあげるよ>と言われたが・ウミガメの泳ぐ姿が頭に浮かんで、健ちゃんともども食べようとの気持ちにならない・お断りした(凄く美味しいと云っていたが)

<この際にやりたいことはやろう>

天気も良くてやる事がない日は地下鉄で梅田に行き、御堂筋を難波までのんびりと歩きながら人間ウオッチングを楽しむ、難波周辺や目についた店のほとんどは食べに入った・・

TVでマッタケが話題になっていたので近くの商店街に行き¥16000の大盛りマッタケを三日で食べる、キャビアも天然物が出回っていたので二日で食べつくす《飽きるように食べればその後は欲しくないだろう》ひと通りの事を試して楽しんだ・

ゴルフを始める

札幌グランドスターで知り合ったやちゃんは余裕ができたのでホストクラブに勤めることになった、ホストクラブではゴルフをやるのが必須条件とかでクラブの仲間達とも瀬田カントリーへはよく行った、当時のキャディさんはプロゴルファーと同じように一人対一人でバックを担いでいた・残りは何ヤードで何番のクラブが良いかを手渡ししてくれる。

ゴルフブーム以前だったので年齢層も高く<後ろの組を気にすることなくのんびりとコースを回れた>クラブハウスでも20代を見かけることはまず無い。

寿司屋のマスター芳美ちゃんと一緒にラウンドする時は、マスター特製の太巻きを用意してくれる、マグロ・エビ・ウナギとか具沢山でお店で出しているのとは別モノだった<これを芝生の上で食べるのは格別に美味しい>ありがたい・

ゴルフはやりだすと面白く夢中になれた・ゴルフにはコンペとか握り(賭け)が付きモノでこれがゴルフを衰退させない一因なのかとも推測した、これは40代後半まで遊べた<ゴルフは40代以降に始めれば一生楽しく遊べる・若きに始めるとやめるのが早くなるようだ>

33)ワクワクと楽しい一日だった

ある日曜日:信ちゃんの住む上本町へ行った<梅田でビリヤードを最初に誘ったのはおいらだったが>信ちゃんは夢中になりビリヤード場で一年間働いたくらいだ、腕前も賭けプロと対戦するほどに上手くなっている。

それからはハンデを貰っても彼には勝てない、この日もビリヤードをやりに行こうと言うので、しょうがないそれでは付き合おうと出かけた・上六ボーリング場内にビリヤードがあった・入口に『第一回ローテーション大会』と張り紙が貼ってある、これじゃは今日は遊べないな~

張り紙を良く読むと<参加費を出せば出場できる>とある<信ちゃん・応援するから出場しろよ>と会場に向かった、ひょっとすると信ちゃんの優勝する場面を観れるかもしれない。

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会場で並んでる時に<観てるだけよりも一緒に出よう>と言ってくれたので、そうだな~その方がイイかもと参加費を支払いエントリーした。

参加者は40人ほどで各ブロックに分かれて敗者復活戦もあり・敗者復活があれば一度くらいは勝てるかもしれないと期待をする<ざわめいた場内で話し声が聞こえてきた>誰々が優勝するんではないだろうかと何人かの名前を耳にする、あ~ここの常連さんなんだろうな~まあいいや取りあえずは迷惑をかけないように打とう。

<優勝を狙ってる人も要るだろうし:球を打つ時は時間をかけずに打つことを心がけよう・そうしよう>

初戦の相手も決まりスタート合図が聞こえた:狙いに時間をかけずにただ勘だけで打っていった・あれれ・な~んと一回戦を勝ってしまった、今日はツイテルこれでノルマを果たせた、後は気楽にできるな~ところが二回戦も勝った・

ありぁ~どうしたんだ~こんなはずじゃないのに・気がかりな信ちゃんはどうなったのかと探すと二回戦で負けて敗者復活戦になったと言う、そうなのか~やっぱし~上手い人がいるんだ。

三回戦もヤマ勘を頼りに打っていったがこの時は最後まで接戦だったが<あれえ~また勝った>何か狐に包まれた感じだ、あれよあれよと準決勝戦にまで進んだ・ビリヤード台の周囲は人が増えて押さないでくださいと声も聞こえる。

まあ~ここまでこれたんだ負けてもいいや・多分これで終わりかな~

いつもじっくりと狙って打っても入らない球をロクに狙いもせずに<ア~あの辺だなと当てずっぽうに打った>ところが難しいバンクショットも一発で決まった、周りは拍手喝采だ~球がポケットインする毎に拍手に包まれる・なにかがおかしいと感じる・又勝ってしまったよ~優勝戦になちゃったよ~

優勝戦の相手は敗者復活で来たので負けてももう一度できるとか、結構神経を使ったのでもう一度はやりたくないな~と思いつつ<優勝戦もヤマ勘だけだ~>

なぜかこの時も有利に流れてゆく、残り球が4球の時に狙い球の正面に邪魔してる球がある、これはクッションを利用して、それもかすかにすれすれに当てないとポケットには入らない<こりゃ~無理だな~>

ア~あのへんに打とう~と時間もかけずに勘だけで打った<球はかすかに薄く当たった>狙い球がスローモーションの如くゆっくりとポケットに流れてゆく・・

この時は見物人も120人程に増えていた・・ウオーと歓声が沸き起こり拍手が鳴り響き場内を包んだ・入った・そしてストレートで優勝してしまった。

やったね!

スタートから二時間以上は経っている<優勝カップと賞状・賞品を貰った>マイクに何か感想をと云われ、何を言っていいのか戸惑いながら・始めて来てこんな幸運に巡り会えたことを感謝します、皆さんどうも有り難う御座いました。

対戦相手のことは全く眼中にはなく・ただ迷惑をかけまいと早打ちをした:対戦側は意識し過ぎたのだろう、それと早打ちのペースに巻き込まれてしまったとしか思えない<無欲の勝利とはこんな事なのかと>

信ちゃんはショックだったようだが、その後も彼にはカモられ続けた、何にせよ勝負事は何が起こるか解らない・実力だけでは勝てないんだと・身をもって知る・ワクワクと楽しい一日だった・

34)一年間競馬場に通ってみた

遊び仲間の彼女達は幸ちゃんほどに稼げないので仕事に行きだした・一人時間が多くなったので場外馬券場に行きだした・最初に馬券を買ったのは20歳の時、シンザンの馬券を買えば儲かるらしいと次郎ちゃんに誘われ、モノは試しと馬券を買ったがそんな時に限ってシンザンは馬券圏内に入らなかった。

<この日も馬券を手に場内テレビを見るが何か物足りない・じゃ~競馬場に行こう>

京阪電車に乗り淀屋橋駅ー淀駅までは押すな押すなの満員電車だ・これが淀駅に着くと流れるようにドッと人が降車する、下車後の車内はガランとしている、これじゃ~地元の人は迷惑だろうな~と思いつつ、人混みに歩調を合わせてついて行くと10分ほどで着いた、

正面から見るとオ~でかい~デパート以上の大きな建物を見たことがなかったので大きさにビックリ、だが中へ入ると横並びの客席なので奥行きはなかった、客席の一番上に上がって競馬場を一望すれば真ん中に池があり白鳥が泳いでいる、

競馬場って広くてきれいなんだ~緑の芝生を見れば何かと落ち着いた気分になれる、30~40分間隔で次のレースが始まる、その間に食事をしたり競馬新聞を見ながらパドックで馬を見たり・馬券を買う時は期待でワクワクする・結果は負けて帰るのだが、帰りの沿道は夜店の集まりみたいに賑やかだった、

ぞろぞろと続く人波に向かってお店のおばちゃんが・いらっしゃい・いらっしゃいと声をかけてくる・店内は満員だ~酒を飲みながら競馬談議に話を咲かせるのか・こんな世界もあるんだ~

阪神競馬場へも電車で行った、梅田から阪急電車に乗りで西宮北口駅で降りて乗り換えがあった・これは不便でマイナスだと感じる、仁川駅から競馬場迄歩くいても京都競馬場程の賑やかさはなかった。

次は車で行こうと豊中IC~京都南IC~京都競馬場まで走る、ここでも驚いた!な~んて広い駐車場なんだ、こんなの見たことがない、まるで荒野のようだ出入口はどっちだろと迷ったが~人の行く方向について歩いた・・

どうせなら一年間を休まず競馬場通いしてみよう<それだけやれば満足するだろう>ある時は電車である時は車で雨の日も風の日も競馬場に行った・そして一年間通った・馬鹿だ~

競馬場は色んな人が来場してる、20代は少なく年代が上がるほどに増えて50代・60代が多かった、好天の日だった<三人の会話に加わってみた>50代の紳士系の人がいて私は競馬に負けることはなく勝った金額から毎年納税もしていると言い放った・ほんとかな~と、今でも半信半疑だが・

ものはついで:社会見学だ

平日には競艇と競輪場にも・住之江競艇場の入口で予想誌を買って入場、平日なのに結構人がいるもんだな~お客さんの層は労働者風が多い、近くの工場や商店とかの人が仕事の合間に舟券だけを買って帰る人もいる。

場内には食堂がいくつかあって簡素だが結構美味いモノもある、客席はワイドに拡がりレース場が見渡せた・この水中に魚はいるのかな~と思って探してみると・鮒が泳いでた・

その時に場内スピーカーから大きな声が流れてきた:<第8レース1800メートル3周>

どうやら一周600mを3周するらしい、エンジン音とともに6艇が思惑のスタート位置を決めて走りながらスタートダッシュをする、この瞬間が見どころのようだ~

6艇だけなので当てやすいかも、だが数が少ないので配当率は下がるよな~と思いつつ客席で予想誌を見ていると、後ろから声が聞こえてきた・・

<さあーいって・さあーいこかー>と意味不明の言葉を連呼してる、すると何人かがお金を渡して紙切れを貰っている、ノミ屋(私設投票)だ~どうして売り場で買わずにノミ屋を利用するのか・解った・売り場で買えば100円・ノミ屋は90円・一割の得だ・なるほどそれでお客さんはいるんだ。

全レースが終ってゾロゾロと歩いていると・おじさんがバックの中から10cm程の写真数枚を出しては地べたにばら撒いた《一枚¥500》と言っている<見ると女体丸見え写真だ>なんとこぞって買い求める人達が居るではないか、このおじさんは収益が上がれば早々と立ち去って行く・結構儲かってるんだ・

すぐ横では小さなテーブルの上に<タバコ3個を並べ・裏側一個に目印がある>指先で持ち左右に動かしながら並べる<さあ~どれだと言ってる>目印タバコを当てれば千円が二千円になる・ここにも人が群がってる<街頭賭博だ>これは戦後に外国から渡ってきたようだ<なぜかおいらは得意だ・バーテン時代にゲームとしてお客さんと楽しんだ>

次は競輪場だな~岸和田競輪と和歌山競輪場に電車で行って見る、両方ともに平日で人出は少なかったがマニアックなお客さんが多いとかで客層も競艇と似たりの層だった、楕円形内を2000m走る競技だった、選手仲間や自身の脚質を考慮し位置取りをする。

残り一周半でジャン(打鐘)が鳴り響く<ここから仕掛けて全力でペダルを踏み込む>瞬速70kmでゴールを目指す、勝ち負けはタイヤ差(数センチ)の時もあり、狭いバンクの中で駆け引きと持久力の伯仲戦になるようだ・

これで公営ギャンブルは一応体験したかな~中央競馬は土日開催で客層も幅広いが競輪・競艇は平日開催が多く、仕事の無い人達や独り者が多いんだろうな~家族がいればできっこないし・

ギャンブルをやれば誰もが思う:何か必勝法はないモノかと<この時に自分なりに考えたことがある>後にこれを販売する事になるが。

ギャンブルと宝くじは異なる:宝くじは空想願望に近いがギャンブルは必ず的中がある:予想誌をどれほどに把握してるかが鍵になる<これは推理ゲームだ>なので予想をしてる時が楽しい・

35)世の中にはこんな人がいたんだ

<洋酒喫茶で働いていた時の後輩・よっちゃんが天下茶屋の駅前に小さな喫茶スナックをオープンするという>

あ~そうなのか、じゃ無給で手伝うよと声をかけた<彼のお姉さんが資金提供らしい>お姉さんには山さんと言う50歳位の旦那さんがいた、この山さんには奥さんがいるんだが体調が良くなくお姉さんが事実上の奥さんとして稼業を切り回しているようだった。

<山さんはいつもゴキゲンな表情で笑ってる・風体はキンチョーのCMに出ている笹野高史さんにそっくりだ~>

みんな一緒にフグを食べに行こうと誘われ幸ちゃんと一緒に黒門市場近くの有名フグ料理店に足を運んだ。

山さんは常連様らしく仲居さんが愛想良く広い座敷に案内をする、山さんにはボディーガードが二人いてその人とお姉さんともう一人《胴元と言う人》と、よっちゃんにおいらと幸ちゃんで8人が同席することになった

仲居さんへの注文の時に<フグのセットを20人前>と言うので、あれれ~と思ったが<山さん曰く>これでもすぐ無くなるからと、その通りだった、次は15人分を注文したがこれは無理だろうと・案の定食べきれなかったが、山さんには残すことは当然のように思えた・

喫茶スナックもオープンして山さんが来店し、会話の中で賭け事は何かやってるのかと聞かれたので・たまに馬券を買って遊んでますと答えると<そうかそれじゃ聞いてみようと>すぐに店の電話を手にしてもしもしOOOさん、うちの若い子が競馬をやってるんだけど、今週のレースで何かいい馬いませんか~

電話を終えて・日曜日の8レースのOO馬を買えばイイらしいと言われたが、いつも9レースから始めるので買わなかった<この馬は2着にきていた>電話の相手は競馬会のおえらさんで馬主だそうだ。

店にアルサロ:ミス大阪のマネジャーが来店した時に山さんと会話を交わすことになった・じゃ~今度店に遊びに行くからねと言っている・・

<次回マネジャーが来店し驚いたと言う・出勤していたホステス70名全員の指名料を支払ったとか>

ある日:白浜温泉に遊びに行こうと山さんに誘われた・列車の方が安全でのんびり行けると天王寺発で行った・信ちゃんも誘って7人で白浜に<旅館で仲居さんに部屋に案内されたが>このフロアーには他のお客さんが誰も見当たらない>聞けばこの階は貸し切りにしてあるから・どの部屋を使っても良いと・

えっ~童心に戻って部屋中をはしゃぎ廻る思いだ・勿論食事はなにをどう食べようが無制限だ~・

山さんの金遣いは常識外だった<これは普通に働いている人には出来っこない>よっちゃんに聞くと野球賭博で負けることがないらしい、その掛け金も一週間単位で上限の2000万を賭けるとか、全部当たれば一割の手数料を引かれ1800万円の利益を手にすると言う、オール勝ちも何度かあるとか・・へえ~

ある時・山さんに野球賭博って勝てるんですかと尋ねると・都市対抗野球は勝ち負けが読みとれると表グラフを見せてもらった。

賭博はプロ野球だけではなかった、相撲も西と東にハンデをつけて賭けの対象になってる、プロ野球は上位チームや勝率の高い投手が投げる時はハンデが付く(賭ける顧客も有名人や驚きの公人も多数いる)な~んだ世の中~やってることはみんな同じなんだ~胴元には週に数億のお金が動くと云う・・ 

山さんは常勝組なのでお返しに胴元がやっている賭場に通っては100~200万円ほどを落とすとか、ところがおかしなもので負けようと貼っても勝つ時があると笑っていた・それが賭け事なんだと・一緒に行こうと誘われたが場所が好みではないのでお断りした。

山さんは遊びを極めていた、南の有名クラブ・ラウンジには一番高いボトルをキープしてあり、毎日を飲み食いで過ごすしかないとか・この人はお金を使うことが仕事なんだ~あぶく銭とはこのことか~

山さんは釜ヶ崎に二軒の簡易旅館を所有している、なるほど~この地区で育ったんであれば人慣れも遊びも長けてるはずだと・変になっとくした・

この釜ヶ崎地区は貧困・スラム街・とかで紹介されてたが、実態は肉体労働者の勤労区であって高度成長期には日雇い労働者が15000~20000人ほども集結していた、一日に落とす金額は2億~3億円なのだ、600平方メートルほどの敷地内で日々これだけの現金が落ちる街は他にない。

近隣の飲食店等は連日の賑わいで大盛況になる・彼らは住居を持たずに日払い・月払いの簡易宿泊所やビジネスホテル風の宿で連日仲間と酒と供に暮らしている<ここは天国釜ヶ崎>歌の文句通りだったのだ・世の中解らないモノだ・

気がかりなのはよっちゃんだ、山さんを身近に見て彼も博打に興味が沸き連れられて賭場にも何度か通ったことがある、麻雀もそうだったが正直言って彼は博才がなく下手だった・やはりと言うかその後に賭け事で失敗をし逃げるように博多に行き半場土方をするようになった。

山さんを見て思ったのは・悪銭身に付かずを地で行ってる・いつも笑っていたが・なにか悪い前例を見たような気もした

フリーライフを楽しむ

 1970年・大阪万博博覧会が開催された、先端技術・未来型都市空間・パビリオン・岡本太郎創作太陽の塔・三波春夫の万博音頭と華やかに賑やかにオープンした、

さっそく行ってみた、広い駐車場は満車状態で入口から人人で溢れかえっている<こんな人混みは初めてだ~>アポロ宇宙船が持ち返った「月の石」をひと目見ようと長蛇の列になっている『来た以上は何としても見るしかない』それでも90分程でアメリカ館に入れた、館内は歩ける状態ではなく群衆に押されて自然に足と体が動いている。

あ~あれだ~柵に囲まれた中央の台上にカプセルが置いてある<その中に数cmのちっぽけな石が入ってる>これなら岩山の石を割って入れても同じじゃないのかと思いつつ、なにかすごいものを見た気分になるのは人混みのせいかも知れない・

人だかりの群れと一団となって・少しづつその場から遠ざかって行く・気が付けば汗だくになっている・やっと出れた・こりゃ~疲れるわ~

今度は暇そうな時期を見計らってもう一度行ってみよう・平日の昼前に行くと案の定と言うか人が少ない、これならのんびりと各館を見学出来る<月の石も並ぶことなく最前で見れた>その後も4度行ったが人出の多い時と少ない時の差が大きい、人が少ない時はなぜか面白くないような<混雑してる方が気持ちを掻き立てられる>おかしなものだな~と感じる・

近年の調査結果では:あの月の石は地球から月に飛んで行った隕石(いんせき)だったとか・米航空宇宙局(NASA)で判明・な~んだやっぱし岩山の石と同じだったんだ・

この時代は高度成長の渦中にあり新聞の求人広告は二面はあった、どこも人手不足で仕事に不自由はしない。

夜の街も盛況だった・南に三軒のサパークラブがあった、ポピューラーな笠・大人の雰囲気の淀・マニアックな青い城といづれも生バンドの演奏で踊れる、食べ物も高級感ある創作で今風の飾りつけをしてある、これらの店は深夜の方が忙しい・ホステス連れのお客さん達で盛況になる・笠にはよく踊りに行った・

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そんな中で変わったスナックがあると耳にしたので行って見た・入口で靴を脱ぎ靴箱に入れる・レジーで¥1500先払い・足を踏み入れると通路は狭く真っ暗闇になっている、足元はグラつき動いたりもする・黒い天井や側面から人の手なのか、お化けが出てきたり・前々に進むと四角に閉じ込められた所に入る・出口が解らない、左横の半面を押すと出れた。

中に入ると一段高くなった段差があったり・板とカーテンで個々に囲ったBOX席があったり・奥に進むと円形の段差作りで座りやすい・囲炉裏の様な感じでくつろげる・なるほど、ここは女性を口説く時に連れてくる店なんだ。

入口通路の天井には絵が描いてある・その絵は女性のある部分だとか・だが大きく描いてあるので気づかない・

クルーザーはカッコいい

雑誌を読み漁ってると・クルーザーの写真があった・カッコイイ・これはお金持ちの遊びなんだろうな~いくらするんだろ、1200~2000万円もするんだ<こりゃ手が出ない>が調べてみると価格の50%は贅沢税(当時)が加算されているとか。

えっ~実際は半額なんだ・手作りヨットの広告もあった<21フイートが200万円ほどだ>これなら作成過程に材料を買い足せば何とかなるかもと、信ちゃんにヨット造りの手伝いを頼んだが時間と興味がないらしくダメだった。

じゃ~諦めよう<これはやらなくて良かった>材料の中にアスベストが多量に含まれている・狭い船室の中でアスベスト貼りをやれば肺疾患になっていたはずだ・助かった・

飲み歩きウオッチング

夜は飲み歩いてはしご酒をするようになった・千日前・坂町付近は小さなスナックが多い、マスターやママに《いつ頃から始めたんですか?どうしてこの仕事をやろうと思ったんですか?どんなお客さんが来るのですか?》コレだけ聞けばその人の人間模様が見えてきて話は尽きない。

<何十件と渡り歩き:人それぞれの生き様を知ると・徐々に読めてくる・似たり寄ったりになってきた>

やることも無くなったので見学がてらに働きに行こうか~求人広告にラウンジのウエイターがあったので行くことにした、店は7人のホステスとカウンターに男性二人、ふた月ほど経った頃だったお客さんがホステスに・こんなものがあるんだと・アメリカのポルノ雑誌を開いて見せた・・

ウワースゴイ・ホステスの黄色い声に思わずチラっと覗くとA4一面に女性のオールヌードが掲載されいた、こんなデカイ写真は見たことがない・その時に脳裏をかすめたのは住之江ボート場で売っていた10cmほどの写真だった。

・ん・これは面白そうだ<作ってみようか>その月末に退店願いを出して辞めた。

カメラを持っていない<ならばしっかり者の五郎ちゃんに借りよう>気のいい彼は二つ返事で貸してくれた・次はモデル探しだ、踊れる洋酒喫茶でゲットしようか・土曜夜のお客さんが多い時に探しに行った、お酒を飲んで誘えば失敗するかもとジンジャーエールを注文し踊り場で物色してると目についた女性を見つけた・

声をかけてカウンターに誘い一緒に飲みながら<今から付き合って>と外に出て車の中で話をした<写真のモデルがいなくて困ってるんだ>顔は写さないからと頼みこんだ・意外とすんなりと決まった・無事モーテルで撮影を済ませることができた、手や髪の毛で顔は隠れるように撮ったので本人とは判明できない・上出来だ~・

しかしながらカメラのレンズを通して見る姿体は通常で見るのとは異なったモノを感じた・ふ~ん・ヌードカメラマンの心情とはこんなん・なんだ~

<撮影後に知った・なんと彼女は一部上場企業・商社に勤務していた>

印刷屋さんを探さなきゃ~

普通の印刷物ならともかく、こんなオールヌードの印刷を飛び込みで頼めることなどできない、こういう時に地方出身者にはコネがない<取り合えずは友人達に声をかけることにしよう>みんなに頼んでおいた・すると3日で連絡が来た~

知り合いのホステスが常連客の印刷屋さんに話をすると引き受けてくれたと云う《お客さんはホステスの頼み事はよく聞いてくれるのだ》早速社長に会って頼むことに・3000部・注文した。

社長もバイト収入だと言って日曜日に輪転機を廻してくれた、夕方に出来上がったので引き取りに行くと、なんと重い・写真用紙の重量の重さには驚いたが、仕上げも上々で流石に本職だな~

さあ~売り込みに行かなきゃ~なんら経験も知識もないがとにかく何処かに販売しなきゃーと、近隣の和歌山市に遊びがてらに行っては見たがローカルでアダルトショップはなかった・ん~やはり東京か~ドライブもできるし行こう~

高速道路で東京へ・熱海温泉に寄ってみようと一泊したが、思ったより小さな温泉地だ~此処なら白浜の方が広くていいな~と感じる、翌日に新宿に到着~昼食を取り歌舞伎町をひと回りして、通りに面したアダルトショップに入った。

店内は大人のオモチャやらヌード雑誌が所狭しとまるで花が咲いたように賑やかに展示してある・おじさんが一人<やはり店主は居ない>この人じゃ話は通じないけどしょうがない・写真を見せるとオ~という顔はしたが、サンプルとして置いてきた<他店もやはり店主は居ない >店はお任せて遊んでるんだな~ サンプルとして置いてきた・

その足で昔働いた西武新宿駅前の店に行く・懐かしい・中に入ると女性カウンターの店に一変していた:超満員でごった返している~店長を呼んでもらった<おいらが辞めた後に女性従業員に切り替えたらしい>翌日に大阪へ戻った。

名刺も持たず・水商売上がりの能無し行動だと途中で気付いたが、これで喰っていくという意識がないので店主に連絡もしなかった<数年後に新宿からビニ本として販売が始まった・これが大ブームに>・なるほど・考えましたね~

 <売り方が下手で迷っていると・知り合いの知り合いとかが現れて原価で引き取ってくれた>

動物好きの友達

幸ちゃんの同僚ホステスが旦那共々に超ネコ好きだとか<面白そうなので遊びに行った>2DKの部屋で通路にも猫ケージが置いてある、何しろ14匹もいるんだ、狭くて横歩きする、部屋の中は猫の置物だらけ。箸からスリッパ衣類も猫ネコちゃん、犬も2匹いる、こりゃ~大変だ、

血統書付きのペルシャ・シャム・ロシアンブルー等を飼って繁殖をしているんだとか、賞を取った猫も何匹かいた、色々とコンテストの説明を聞いて帰ってはきたが・この夫婦は本当に猫好きなんだろうか?檻の中に閉じこもったままの猫は幸せそうには見えない・可哀そうに思えた、、

それに刺激されたのかどうか、子供の頃のジョンと家に居た番犬タローを思い出しポメラニアンの雄を飼うことに・一匹では淋しいだろうと三ヶ月して雌を飼った・その後に子犬ができた・コロコロとしててなんとも可愛らしい・それから犬の能力を改めて知ることになる・

やはり動物がいると平和な気持ちになれる・愛犬は今では当たり前の二足立ち歩きが出来ていた・

36)卒業しよう・ヒモ生活を・

相も変わらず暇な時は潮岬・日ノ岬へと釣りには出かけてはいたが、釣った魚は今だに一度として食べたことがない、これは少年時代から続いている、最初に釣った鮒が可愛かったのとミミズの餌だった・食べる気がしない・なのに魚は好きでよく食べる・なにか矛盾してる・他の人はどうなんだろうと調べてみると・いるいる・理由はよく似てる・やはりそうなんだ~

そうこうしているうちに、いつしか5年ほどになる<昼も夜も好きなだけ遊べた・ゴルフ・スキー・夜遊び・旅もした>だがなんとなくむなしい気分に包まれる様になっていた・飽きと目標がないのが・

<もうすぐ30才だ~いつまでこんなことをやってるんだと自問自答する・・卒業しなきゃ~>

このま幸ちゃんと居れば甘えから逃れられない・彼女は独り立ちできる能力がある・別れよう・

幸ちゃんも金銭欲がなく一緒に住んで半年も過ぎた頃に、100万円貯まったけどあんた使ってと云うので<自分で稼いだお金だから先々の為に残しといたら>と・言った事がある、こういう人はお金は貯まる、ましてや高級クラブに勤めていれば客層も良い<色々な情報も入るだろう>大丈夫だ・彼女ならやってゆける・

そして心情を説明し別れを納得してもらった、その時<私はこの先どうすればいいのと聞かれたので>ビルやマンションのオーナーを目指すようにと勧めた・

幸ちゃんは新しく部屋を探し子犬を一匹連れて引っ越しをした・18年後にたまたま大阪商工会議所に行った時<ビルオーナーの名簿>に彼女の名前が載っていた・なんとも嬉しい・流石だ・やったね・良かった!

37)職場はディスコだ~♬ 楽しい ♬

一人生活がスタートする・甘えは終わった!

自立しなきゃ~<前進あるのみ>仕事探しだ~まだ夜の仕事に未練が残っている・取りあえず出かけよう・以前に働いていた宗右衛門町の洋酒喫茶に遊びに行くと経営者が替わり・ディスコ風に様変わりしていた・その時の主任が店長になっている。

なんと~この人はずっとここで働いていたんだ・カウンターに座ってると店長がやってきて声をかけてくれた、もし仕事をやっていなかったらここで働かないかと<えっ~渡りに船とはこのことだ>お願いしますと即答した、こんなこともあるんだ・・ツイてる。

月給は22万で休みは土曜日以外に月3回を選べる(平日は午前1時まで土曜日は朝5時まで営業)出勤すればその分は加算されるという、条件はどうでも良かった・仕事に飢えていたのか・働けるんだという喜びと感謝を感じた・

翌日から主任として出勤することになったが、二日後と三日後に新しい主任が一人づつ入店して三人になった、丁度この時期に募集をかけていたようだ。

三ヶ月半は一日も休むことなく休憩もほとんどせず、多忙な時はウエイターを手伝う、仲間達に信頼されなければいけない・それには見本となる姿勢で人一倍に動かないと認めてはくれない・二人の主任は二月と三月で辞めて行ったが。

<三ヶ月が過ぎると気心が知れて皆と談笑する機会が増えた・4ヶ月後・マネージャーに昇格した>

マネージャーの仕事ってなんだろうと考えてみる、サービス業だから一番はお客様が安全に楽しんで貰えるようにバックアップすること、従業員には働きやすい環境を作ってあげる・これしか頭に浮かばなかった・もうひとつ浮かんだ・店長に楽をしてもらおう、おいらが働くほどに店長は楽になる・

38)ディスコブームの到来

その年の11月に全面改装を施し<ディスコB&B>になった、日本バンドとフィリピンバンドが交代で演奏をする、ずっと音楽が流れている・お客さんは夢中に踊って楽しんでいる・こんな中で仕事ができるとは何とも嬉しい。

日本バンド4人組のギャラは100~120万円・フィリピンバンドは2~3ヶ月で交代し一人頭30万円X6人なら180万円(住居と食付き)のギャラになる。

毎日聴いていると双方の演奏に大きな違いがあった、日本バンドは楽譜とにらめっこ・オーケストラの演奏のようだ・表情はうつむき加減の姿勢になり無表情で演奏する・ここはディスコでお客さんを楽しませる場所なんだが・と・

バンドマスターにそれとなく尋ねてみると・やはり楽譜を見ないと演奏できないらしい・習慣漬けになってるんだ~、それ以上は突っ込めない<フィリッピンバンドは違った>それぞれが個性で演奏をしている、お客さんの踊りを見ながら演奏できてる・笑顔もある・だから女性にもモテる。

バンマスに楽譜は見ないのかと聞くと楽譜は読めないと言う・皆子供の頃から音楽が好きで・曲は耳で憶えたと・なるほどこれがその差なんだ・ステージではよそ見もすれば笑顔もある、どちらが楽しいかと言えば当然のことになる・

 店内で物足りない部分を感じていた<おいらはよく遊びに行き踊ってもいたので解るが>照明がほったらかしで活躍していない・たまに店長が触るくらいだった・こりゃ駄目だとストロボや多色変換のステージライトを曲に合わせてコントロールした♫ これで倍ほどに踊り易くなるはずだ ♫

この頃からディスコが世界中に流行り出した<来客数も上昇の一途になる>有名人も見学がてらに遊びに来たりで多種多様な人達が踊りを楽しみにくる、働く側も楽しくなる・

 情報誌を読んでるとアメリカのディスコはレコード音楽で踊っている・そうなのか・今からはレコードの時代になるんだと早速・店長に提案をすることに、バンドからレコードに切り替えれば経費節約にもなり効率的ではと、

本社の方で反対をされた・諦めずに2度目の説得をした<バンドは演奏曲には限りがあり曲も古い・レコードは最新の曲を流せるメリットがある、設備費は日本バンドのギャラがなくなれば三月で元は取れると・

じゃ~ディスクジョッキーはどうするんだと本社部長が問うので<私がやりますと答えた>♬ 当たって砕けろ~ だ ・  やってやれないことはない~

DJのコツをフィリピンバンドのバンマスに聞いてみよう<その曲の歌詞や一節を取り入れればと良いのでは>と教えてくれた、そうか~それが基本なんだ・そうしよう・途中にハヤシ立てるアクションを投げかければ何とかなる・・

 DJをスタートした「 ザッツ・ザ・ウェイ」レコードを回してハヤシ言葉をかけるとみんなが一体になって踊ってくれてる ♪ 同化してる ♪ なんと楽しい~ こんな楽しい仕事があるんだ~イヤーこれは仕事じゃない、遊びだ~おいらが上手く遊ぶほどにお客さんは楽しくなるんだ~~コツがわかったぞ・・

それにしてもフィリピンバンドの給料は安い、バンマスに聞けば手取りは¥5000~¥8000円だという、6人メンバー総額でも5万円で足りる、プロダクッションのピンハネってすごいな~と感じた、こりゃ悪業だ~往復の飛行機代や諸経費を支払ったとしても・これが世の中のシステムなのか~彼らを応援したくなった・

店は順調だ~ディスコブームになり良い曲が次から次へとリリースされる・一曲ヒットすれば世界に市場があり一生食えるのでメンバーをかき集め一発屋のバンドも誕生するが・これも時流に乗って引く手あまたで売れる時代になっていた。

スウェーデン出身の男女4人組 アバ(ABBA)の大ヒットの年は<名車ボルボ社よりも納税額が上回っていた>何とも驚きだ・音楽ってこれほどに収入になるんだ・知らなかったな~

土曜日は来客数が2000人を超えて通路もホールもごった返している<まさにサタデーナイトフィーバーだった>従業員は多忙でまあ~疲れる、ウエイターの給料は仕事量に応じられていないようなので、ボトルキープ制にして歩合を付けるように提案をした、これで2~6万円ほど増額になりウエイターも喜んでくれた。

ブームになれば多少のことは無理が効く・キープ制でも応じてくれる・チェックアウト時間も必要になる、これをやらないと広い店内でも身動きが取れないほどになる。

同じようにブームになったものにインベーダーゲームがある・やってみると面白く結構夢中になる・テーブルに座ってやるので店に置けないだろうかと考え業者を呼んで・12台ほど置いて貰った。

平日とか踊らない人にも楽しめるだろう・おまけにバックマージンもあって一石二鳥になる・この収入は従業員慰安の時に使おう・年末の忘年会の時に思い切りご馳走を出して楽しんだ。

この店には従業員の寮があり23名乗りマイクロバスもあった、終了時に地下鉄がないので寮や通勤者の送迎や季節ごとに海水浴・ハイキング・スキーや慰安旅行にも活躍する・お水の仕事にしては整っている・おまけに景気が良いので毎年昇給がありボーナス迄貰えた・ありがたや~ありがたや~

39)店内で喧嘩が始まる

仕事にイイこと尽くしはあり得ない・悪いことも多々ある、その一つに土曜日なると必ずと言っていいほど喧嘩が始まる、多い時は3度もあった。

ウエイターが止めに入り5~6人が集中してもみ合ってる、その中に拳を上げて殴りかかろうとする男がいた、その右腕をおいらの右腕を絡ませ羽交い締めにした、当人は切り離そうと必死にもがき暴れるが動かない、がっしりと絡ませ思い切り上に締め上げた・3分程するとおとなしくなったので手を離す、ところがこの男はこの時だけではなかった。

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2回目・3回目の喧嘩の時も同じように羽交い締めにされたので、さすがに懲りたのかそれからは喧嘩はしなくなった、彼は何処かの組員だった・・

他人の喧嘩で注意をしなきゃいけないことがある<仲裁に入ることは非常に危険なのだ>双方が緊張の中にあり・矛先が仲裁者に向かって来る可能性大なのだ(これは二人にやられる事がある)君子危うきに近寄らず

インベーダー収入とおいらの折半で100㎏のバーベルを買って休憩室に設置した・皆も暇な時にやりだした。

大阪の番長だった

営業中に店内に立っているとやや体格のイイ若者が話しかけてきた、店の事やらを聞いて軽く会話を交わしたのだが、2週間が過ぎた頃に又話しかけてきた、気さくで話しやすい感じの若者だったので世間話に付き合った、三度目の時に彼はこう言った<マネージャーに頼みがあるんだけど聞いてくれないかと>

どうしたのと聞くと・少しの間だけどチャカ(ピストル)を預かってほしんやけど、それは無理やな~と返答した、彼は想定内の言葉と受け入れたようだった、それからひと月も経たない頃にウエイターが話しかけてきた・彼は死んだそうです・彼は大阪で一番の番長だったんですよ~なるほど18才だったのか、それにしても落ち着きがあった。

ピストルは人を殺すための道具だ<それ以外に使い道はない>そんなモノは必要ない・人を殺せば自分も死ぬ覚悟はするべきだと・ニュースを見るたびに思う、殺人を犯したなら即自首してくれ~逃げて生き恥をさらさないでくれ~と言いたい、人の命は誰しもが同様・同格だ~

さあ~今夜も忙しくなるぞ~お客さんをサウンドで包み込み・身も心も弾ませ踊ってもらおう・それが仕事だ~

40)弟が調理師を目指すことに

弟から連絡が来た

マネージャーになって間もない頃だったが、23歳になった弟から連絡が来た、今から調理師を目指したいので何処か働く所はないだろうか・食い倒れの大阪で学たいのでそちらに行きたいと<そうか~とりあえずキッチンのチーフに聞いてみよう>

チーフ曰く、調理師を目指すには鍋洗い・掃除・包丁研ぎからどんな下働きでも文句ひとつ言わずに耐えて<無心でやれる中卒が望ましい>基礎から叩き込んでゆけるからと、23歳からでは耐えられるだろうか~<やはり厳しい世界なんだ>だが弟も考えた挙句に志を決めたわけだから、何処か探さなきゃ~

南の三つ寺筋を歩き回ると角に寿司屋があった・板壁に募集の張り紙があり・住み込み可と書いてある、そう言えばこの店は以前からずっと貼ってあったはずだけど・従業員が続かないんだ~

だがなんとなく気になるので何人かに店の評判を聞いてみることにした、するとあの店は値段が高くて普通の人は通えない・藤山 寛美さんが常連客だとか・ふ~ん~そうか、これも何かの縁だと思ってその店を勧めることにした・

出勤は午後2時から~掃除・仕込み・準備~営業は午前3時まで、それから片付けとかで帰って寝るのは5時頃になる・起きると仕事の繰り返しで遊ぶ間もない・まさにクタクタの働きづくめだ~弟はこれに耐えた・我慢して耐えて学んで三年余を乗り越えた、そこはふぐ料理もあったのでふぐ免許も取得していた・よく辛抱したね~

               

それから市内の寿司屋に転職の後、博多に戻り調理師連合に所属する<島根や熊本の料理旅館で料理長を勤め>料理の鉄人で日本一と謳われた道場六三郎さん監修の大型店が博多にオープンした・この時に弟は料理長になっていた・勉強家だ~。

その後に今度は末弟が来阪してきた、弟の話では親父の納税額が福岡市で10位内、福岡県内で20位内に入ったとか、ふ~んそうなのか・

新聞とかで高額納税者の番付を見る度に<こんな人達ってどんな生活をしてるんだろうかと想ったことがある>我が身を振り返ってみれば子供の頃に冷蔵庫もなくおやつや甘いものには縁がない・おかげで一度も虫歯にならなかったが・時折り腹が減っては水道水で満腹にしていたのに・そんなおいらが高額納税者の家庭で育ったなんて・と思ったら笑いもでない・

考えてみれば親父は博打には手を出さなかった・中洲に飲みに行くこともなかった・その気になれば行けただろうに、近くの酒屋か家飲みだったし~友達付き合いもせずに趣味もない・蓄えたお金で土地を買ってはいたが・高度成長期に入り土地価格の高騰で売却したんだ・・

親父もまさか・これほどに土地が値上がりするとは思ってもいなかっただろう・当人が一番びっくりだったかも・放置していたあの220坪と150坪の土地と家と・・

<末弟はチーフに頼んで梅田地下街の天ぷら専門店を紹介してもらい・住み込みで働くことになった>

料理人の世界は<料理長が弟子を引率して転職する仕組みになっていた>店側は調理人に給料を支払うのではなく、料理長に毎月の契約額を支払う・そして料理長が弟子に手当を渡す・食材の仕入れ業者も料理長の一存になる・だから料理長は条件のいい店を自ら探しては弟子を引き連れて転職をするという・知らなかったな~

P-5に続く

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